
相談者:建設会社社長
建設会社の建設業部門(建設業許可)を譲り受けようと思っています。「事業譲渡」になるか「吸収合併」になるか「吸収分割」になるかは未定ですが、いずれにしても、建設業許可の番号とその地位を承継する必要があります。その際に、「認可申請」という手続きが必要だと聞きました。この「認可申請」を行政書士法人スマートサイドにお願いすることはできますか?また、その際に必要になる書類は、どういったものがありますか?
回答者:行政書士
はい、もちろんです。行政書士法人スマートサイドでは、建設会社の事業承継(合併・分割・事業譲渡)における認可申請の手続きも承ることができます。事業譲渡の日までに認可を受けておかないと、許可番号を承継することができないので、合併や分割の効力発生日からの逆算して、スケジュールを共有させていただくことが必要です。まずは、どういった書類が必要かについて、ご説明させていただきます。
建設業許可を引き継ぐための「認可申請」とは?
事業譲渡・合併・分割といった事業承継の際に、建設業許可の番号や建設業許可業者としての地位を引き継ぐためには、「認可」を受ける必要があります。多くの人がご存知ないかもしれませんが、「合併」「分割」「事業譲渡」という会社法上の手続きを行っただけでは、建設業許可の番号や建設業許可業者の地位を引き継ぐことはできないのです。
例えば、「建設業許可を持っていないA社が、建設業許可を持っているB社の建設業部門の事業を譲り受ける」というケースを例にとってみましょう。この場合、A社は、B社の建設業部門を譲り受けるわけですから、会社法467条の事業譲渡に該当します。会社法上、事業譲渡の際には「株主総会の決議によって承認を受けなければならない」「反対株主に対する株式買取請求ができる」といったように、さまざまな規定があります。
しかし、これら会社法上の手続きを滞りなく終わらせ、無事、A社がB社の建設業部門を譲り受けたとしても、それだけではA社はB社の建設業許可番号や建設業者たる地位を引き継ぐことができません。この場合、B社がA社の建設業許可番号および建設業許可業者たる地位を引き継ぐには、事業譲渡の日よりも前に、「認可」を受けていなければなりません。この「認可」を受けるために必要な申請を認可申請と言います。
- なぜ、建設業許可を持っている会社を合併するのか?
- なぜ、建設業許可を持っている会社を分割するのか?
- なぜ、建設業許可を持っている会社の建設業部門を譲り受けるのか?
という理由を考えた際に、最大の目的は『「許可業者たる地位」「許可番号」を引き継ぐこと』にあるのではないでしょうか?万が一、認可や認可申請を忘れてしまった場合、この最大の目的を達成することができません。事業承継が終わった後になってから、認可を受けることはできませんので、事前に十分な準備をしたうえで、時間に余裕をもって認可申請に臨む必要があります。
このページでは、認可申請の際に必要になる書類を中心に解説していきたいと思います。

東京都の建設業許可を取得・維持する専門家。大規模な会社の許可申請や、複雑な事案での許可維持を数多くサポート。「大臣許可会社の新設分割に伴う許可承継」「親会社の子会社合併に伴う許可の維持」を経験するなど、事業承継における認可申請手続きにも精通している。「建設会社の社長が読む手続きの本(第2版)」を出版。 インタビューは、こちら。
建設業許可を引き継ぐために必要な書類
建設会社の「合併・分割・事業譲渡」の際に、建設業許可を承継するために必要な書類は以下のように「認可申請時に提出するもの」と「事業承継日以降に提出するもの(後日提出書類)」の2つに分けて考える必要があります(※なお、このページでは、東京都都市整備局市街地建築部建設業課が発行する「令和7年度 建設業許可申請の手引き」を参考に、書類を掲載しています)。
認可申請時に提出するもの
(本冊)
| 書類 | 詳細 |
|---|---|
| 譲渡/合併/分割認可申請書 | 申請書の表紙に該当するもの |
| 役員等の一覧表 | 認可を受ける会社の役員に関する一覧表 |
| 営業所一覧表 | 認可を受ける会社の営業所に関する一覧表 |
| 営業所技術者等一覧表 | 認可を受ける会社の営業所技術者に関する一覧表 |
| 工事経歴書 | 認可を受ける会社のもの |
| 直前3年の工事施工金額 | 認可を受ける会社のもの |
| 使用人数 | 認可を受ける会社のもの |
| 誓約書 | 認可を受ける会社のもの |
| 定款 | 新規設立法人である場合は後日提出可 |
| 営業の沿革 | 新規設立法人である場合は後日提出可 |
| 所属建設業者団体 | 新規設立法人である場合は後日提出可 |
| 健康保険等の加入状況 | いずれか一方 |
| 健康保険等の加入状況に関する誓約書 | |
| 主要取引金融機関名 | 新規設立法人である場合は後日提出可 |
(別とじ)
| 書類 | 詳細 |
|---|---|
| 常勤役員等証明書 | 認可を受ける会社の常勤役員に関する証明書 |
| 常勤役員等略歴書 | 認可を受ける会社の常勤役員に関する略歴書 |
| 営業所技術者等証明書 | 認可を受ける会社の営業所技術者に関する証明書 |
| 技術者要件を証明する資料 | 合格書や卒業証書や実務経験証明書 |
| 許可申請者の住所、生年月日の調書 | 認可を受ける会社の役員等に関する調書 |
| 株主調書 | 認可を受ける会社の株主等に関する調書 |
| 登記事項証明書 | 新規設立法人である場合は後日提出可 |
| 事業税の納税証明書 | 新規設立法人である場合は設立届を後日提出可 |
(確認資料)
| 書類 | 詳細 |
|---|---|
| 承継に関する書類 | 合併・分割・事業譲渡に関する契約書や説明書など |
| 登記されていないことの証明書 | 発行後3か月以内 |
| 身分証明書 | 発行後3か月以内 |
| 常勤役員等の確認資料 | 常勤性の確認資料は後日提出 |
| 営業所技術者等の確認資料 | 常勤性の確認資料は後日提出 |
| 社会保険の加入証明資料 | 新規設立法人である場合は後日提出可 |
| 法人番号を証明する資料 | 新規設立法人である場合は後日提出可 |
| 営業所の確認資料 | 新規設立法人である場合は後日提出可 |
| 役員等氏名一覧表 | 認可を受ける会社の役員等の一覧表 |
承継日後に提出するもの(後日提出書類)
| 書類 | 詳細 |
|---|---|
| 定款 | 新規設立法人である場合、30日以内に提出 |
| 承継直後の財務諸表 | 新規設立法人である場合、30日以内に提出 |
| 営業の沿革 | 新規設立法人である場合、30日以内に提出 |
| 所属建設業者団体 | 新規設立法人である場合、30日以内に提出 |
| 主要取引金融機関名 | 新規設立法人である場合、30日以内に提出 |
| 法人設立届 | 新規設立法人である場合、30日以内に提出 |
| 法人番号を証明する資料 | 新規設立法人である場合、30日以内に提出 |
| 承継日における経管・営技の常勤性の確認資料 | 承継後、2週間以内に提出 |
| 健康保険の加入状況 | 承継後、2週間以内に提出 |
| 社会保険の加入証明資料 | 承継後、2週間以内に提出 |
| 営業所の確認資料 | 承継後、2週間以内に提出 |
| 被承継者の決算報告 | 被承継者の事業年度終了後4か月以内 |
| 大臣認可に係る届出書 | 知事許可業者が大臣認可を受ける場合 |
また、後日提出書類の提出期限が「30日以内」「2週間以内」といったように、とてもタイトに設定されています。合併や分割によって、新しい法人が設立された場合、法人設立の登記が完了するまでに1か月以上かかるという話をよく聞きます。そのため、法人設立届や社会保険の加入証明資料を期限内に提出することができないケースもあります。そういった場合には、行政庁に連絡をし、事前に事情を説明するようにしてください。
建設業許可の合併・分割・事業譲渡でお困りの方へ

建設業許可を持っている会社の「合併・分割・事業譲渡」の際に必要な認可申請の提出書類について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?正直、非常にわかりにくかったのではないかと思います。
まず、一言で事業承継といったも「合併」「分割」「事業譲渡」に分かれており、かつ、個人事業主がお亡くなりになった場合の相続のケースや、個人事業主が法人成りする場合に建設業許可を引き継ぐケースなど、さまざまなケースがあるため、どんな場合にどの書類を用意すればいいのか?という点についての場合分けが複雑になってしまうからです。
また、同じ書類でも、「合併や分割に伴い新たに法人が設立される場合」と「そうでない場合」とでは、書類を出すタイミングが異なってきます。認可申請時に提出するのか?それとも、事業承継後に後日提出書類として提出すればよいのか?判断に迷う書類が少なくありません。私たちのように建設業許可申請に慣れている専門家でさえ、ややこしく感じるのですから、素人のみなさんがわからないのも無理はありません。
こうした事情から、事業承継に伴う認可申請は「調べれば自分でできる」という種類の手続きではありません。むしろ、ほんの小さな判断ミスや書類の不備が、許可番号の承継不可といった重大なトラブルにつながりかねないため、慎重に手続きを進める必要があります。
行政書士法人スマートサイドでは、「合併」「分割」「事業譲渡」といった事業承継の際の認可申請のサポートに力を入れています。特に
■ 行政庁への事前相談
■ 提出書類の過不足チェック
■ 申請スケジュールの調整(合併や分割の効力発生日からの逆算)
■ 経営業務管理責任者や専任技術者の常勤性の確認
といった、認可申請の手続きで、最もつまずきやすいポイントを支援させて頂きます。
「許可を切らすわけにはいかない」
「スケジュールどおりに合併・分割を進めたい」
「専門家の伴走を受けながら確実に申請したい」
もし、少しでもこのように感じていらっしゃるなら、どうぞ一度ご相談ください。弊所では、御社の個別の事情に応じて、事前予約制の有料相談を実施しています。特に、会社の合併・分割・事業譲渡といったような秘匿性の高く専門的知識を要する案件については、事前予約制の有料相談を強くお勧めいたします。状況を丁寧にお伺いし、最適な手続きと、必要となる書類・スケジュールをご提案いたします。複雑な事業承継だからこそ、専門家をうまく使ってください。大切な建設業許可を確実に承継するために、行政書士法人スマートサイドがお手伝いします。














