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経営業務管理責任者の交代の正しい手順:
変更に伴うリスクと注意点を成功事例をもとに解説

経営業務管理責任者の要件は、建設業許可を「取得・維持」するために、とても重要な要件です。経営業務管理責任者が、「不在」となれば、許可取得はもちろんのこと、許可を維持することもできません。

とはいうものの、現在の経管が、高齢化・病気などの理由で、退職する場合もあります。そのような場合に必要になるのが「経営業務管理責任者の変更(交替)」です。この変更(交替)がうまく行かないと、許可を切らしてしまったり、廃業届を出さなければならなくなったり、建設業許可を維持することが出来なくなります。

このように経管変更届は、とても重要な届出になります。1つの会社で何回もあるようなことではないので、失敗したくないということであれば、会社内で処理するよりも、専門家である行政書士に依頼をした方が、安全です。

今回は、電気工事業許可を取得している事業者が、他の会社から取締役として経管を招聘し、経営業務管理責任者の変更に成功した事例をご紹介いたします。

相談内容:経営業務管理責任者を新しい人に変更したい

概要

会社所在地東京都新宿区
業種電気工事業

相談内容

相談内容

電気工事業の許可を持っている。現在の経営業務管理責任者を新しい経営業務管理責任者に交替したい。知り合いに、電気工事業を営んでいる会社の取締役がいるが、その会社は建設業許可を持っていない。

絶対に、許可を切らすわけにはいかないので、どうにかして経管の変更(交替)を行いたい。どうすればよいか?

申請内容

申請内容

・経営業務管理責任者の変更(電気工事業)

行政書士法人スマートサイドの対応

経営業務管理者の変更(交替)に関する相談は、とても多いです。経営業務管理責任者の高齢化や退職に伴い、新しい経営業務管理責任者を探している事業者さまも、多いのではないでしょうか?

経営業務管理責任者の変更(交替)は、絶対に失敗できない超重要な案件です。本件においても、初回面談の際に事実関係について、十分にヒアリングを行いつつ、手続きを進めることにしました。

Yさん現在の経営業務管理責任者(ご高齢)
Xさん

新しい経営業務管理責任者(Yさんの後任

A社許可業者。経管をYさんからXさんに変更したい
B社Xさんが取締役をしていた会社

経営業務管理責任者を変更する際の要チェックポイント

1.現在の経営業務管理責任者について

現在の経営業務管理責任者

(Yさん)

  • 会社(A社)に常勤しているか?
  • 会社(A社)に在籍しているか?

経管を変更する際の確認事項の1点目として、「現:経管」は、会社に常勤しているか?という点です。

東京都の場合、経管を変更するには、「現:経管」と「新:経管」の両方について、会社に常勤していることの証明が必要になります。

本件は、電気工事業の建設業許可(東京都知事許可)をお持ちの事業者(A社)からのご相談でしたので、現時点で、「経営業務管理責任者(Yさん)が会社に常勤しているか?会社の健康保険に加入しているか?」について、真っ先に確認をしました。例えば、「死亡や病気などの理由で、経営業務管理責任者が、現時点で、会社に在籍していない」となると、いったんは廃業届を出さなければならなくなるからです。

この事業者さまの場合、現在の経営業務管理責任者は、会社に在籍(常勤)しているとの事でした。

2.後任の経営業務管理責任者について

後任の経営業務管理責任者

(Xさん)

  • 取締役としての経管が5年以上あるか?
  • その間、工事を行ってきたか?

次に、後任の経営業務管理責任者(Xさん)についてです。経営業務管理責任者になるには、「取締役(もしくは個人事業主)としての経験が5年」と、「その間、建設業(電気工事業)を行ってきたことの証明」が必要になります。

本件では、Xさんには、B社の取締役の経験が5年以上あり、その間、電気工事業を行ってきたことの証明も出来るとのことでした。取締役の経験は、登記簿謄本で確認できますが、電気工事業を行ってきたことの証明は、後任の経営業務管理責任者(Xさん)が取締役であったB社にしてもらわなければなりません。

つまり、経管の変更をしたい会社(A社)ではなく、後任の経管候補(Xさん)が取締役であった会社(B社)に「電気工事業の契約書や通帳・請求書」を出してもらわなければならないわけです。この点についても、B社との連携がすでにできているとのことでした。

以上の点を確認し、「いずれについても問題はない」という事業者さまの言質を得たうえで、弊所で受任することになりました。

経営業務管理責任者を変更する際の「作業」手順

1.B社の登記簿謄本の確認

まずは、後任の経営業務管理責任者(Xさん)のB社での取締役の就任状況を確認する必要があります。取締役に就任していなかったり、取締役の期間が5年未満だったり、代表取締役であったりすると、この時点で、XさんにA社での経管としての資格はありません。

B社の登記簿謄本を確認したところ、XさんはB社で10年以上に渡って、取締役をしており、取締役としての期間に問題はありませんでした。

2.B社が準備する資料

本件で、経営業務管理責任者の変更を行うのは、A社です。しかし、資料の準備で大変な思いをするのはB社です。なぜだか、わかりますか?

A社は、Xさんを新任の経営業務管理責任者として迎え入れます。Xさんが、経管の要件を満たすには、「5年以上の取締役の経験とその間の電気工事の実績」が必要です。Xさんは、B社で取締役を務めていたので、B社での5年以上の工事実績を証明しなければなりません。

B社は、A社のために「Xさんが取締役に就任していた5年間の工事の実績」を準備しなければなりません。具体的には、「電気工事の請求書」「入金通帳」を月1ペースで5年分以上(計60か月分以上)準備しなければならないのです(※現在は「3か月1件のペース」に運用が変更しています)。

この資料については、お客様から事前に宅配便で送って頂き、請求書の記載や、通帳の入金記録に不整合や不自然な点がないか、慎重にチェックしました。経営業務管理責任者の経営経験を証明するのに、とても重要な作業です。

A社とB社は昔から付き合いがあったらしく、上記の資料の提出にB社の協力が得られたことが本件の大きなポイントでした。

3.Xさんの住民票上の住所の確認

XさんがA社の経営業務管理責任者になるには、A社に常勤することが必要です。もし仮に、A社の所在地が東京都で、Xさんが熊本県在住だとすると、どんなに請求書などの資料を準備しても、XさんはA社の経管になることはできません。熊本県に在住しているXさんが、「東京都内のA社に常勤している」ということは通常あり得ませんね。そこで、Xさんの住民表上の住所を確認する必要があります。

Xさんは、千葉県に在住の方でした。場所にもよりますが、千葉県であれば、A社への通勤圏内です。東京都の手引きには「おおむね片道2時間」との記載があります。新しく経管に就任する方の住民票上の住所も確認しましょう※現在、運用の変更により、東京都の場合、住民票を提出する必要はなくなりました)。

4.A社での取締役の就任・社会保険の加入

XさんがA社の経営業務管理責任者になるには、

  • A社の取締役に就任すること
  • A社の社会保険に加入すること

の2点が必要です。本件では、取締役の就任も、社保加入もA社自身に行って頂きました。もちろん、弊所と付き合いのある「司法書士」「社労士」にお取次ぎすることも可能です。

司法書士取締役の就退任などの登記の変更を法務局に届出
社会保険労務士

健康保険や厚生年金の加入を年金事務所に届出

行政書士建設業許可の申請を許可行政庁に届出

5.高齢で社会保険に加入できない場合

では仮に、Xさんが高齢(75才以上)で健康保険に加入できない場合は、どうすればよいのでしょうか?

本来であれば、A社の社名が入った健康保険被保険者証のコピーで、XさんのA社への常勤を証明することができます。しかし、75才以上の方は、社会保険に加入することができないため、Xさんが75才以上だと仮定すると、A社の社名が入った健康保険被保険者証のコピーを提出することができません。

そこで「A社の社名が入った健康保険被保険者証のコピー」に替えて、以下のものを準備します。

  1. Xさんの後期高齢者医療保険被保険者証
  2. Xさんの住民税がA社の給料から特別徴収されることがわかる資料

「2」については、すでに住民税の特別徴収が行われているのであれば、「住民税特別徴収税額通知書(徴収義務者用)写し」、これから特別徴収が行われるのであれば、「市役所や区役所に提出した異動届」になります。

Xさんの年齢Xさんの常勤性を確認する資料(コピー)
75歳未満

社名の入った健康保険証

75歳以上

後期高齢者医療保険被保険者証

住民税特別徴収通知書(納税義務者用)

6.無事、経管の変更に成功!

前任の経営業務管理責任者が、会社に在籍している本件のような場合には、前任者の健康保険証のコピーが必要です。一方で、本件と異なり、すでに退職してしまっているケースでは、資格喪失届が必要になります。

本件では、Xさんの住民票、後期高齢者医療保険被保険者証、住民税の異動届、前任経管の健康保険証などを必要書類として都庁に持参しました。

審査の場では、B社が用意した電気工事業の請求書と通帳5年以上(60か月分以上)を、細かくチェックされましたが、特に不備もなく、受付けてもらうことが出来ました。


なお、Xさんが取締役を務めていたB社の協力があったので、無事、経営業務管理責任者の交替を行うことが出来ましたが、逆に、B社の協力なしでは、経管の変更を行うことはできなかったでしょう。

経管の変更には、さまざまなパターンがあります。自社だけで処理できる場合もありますが、本件のように、どうしても他社の協力を仰がなければならないケースもあります。


 

経営業務管理責任者の変更に伴うリスクについて

さてここでは、経営業務管理責任者の変更という手続きが「こわい理由」について、専門家の見地から記載させて頂きます。

経営業務管理責任者が常勤していることは、建設業許可要件ですので、前任者と後任者との間に1日でも空白があれば、許可を維持することができません。しかし、経管変更がこわい理由はこれだけではありません。

経営業務管理責任者になるには、

  1. 取締役時代の工事の資料を他社に準備してもらわなければならないこと
  2. 自社の取締役に就任して頂くこと
  3. 自社の社会保険に加入して頂くこと
NO経管変更に伴うリスク

取締役時代の工事の資料を他社に準備してもらわなければならないこと

自社の取締役に就任して頂くこと

自社の社会保険に加入して頂くこと

まず、「1」について。

後任の経営業務管理責任者の経営経験を証明するには、他社に証明資料を提出してもらわなければなりません。他社が非協力的であったり、過去の実績を提出することを渋ったりすれば、その時点で経管変更は難しくなります。

次に、「2」「3」について。

後任の経営業務管理責任者には「2.自社の取締役に就任して頂き」「3.自社の社会保険に加入して頂く」必要があります。「急いでいる」からという理由で、先に「2」や「3」を済ませようとする方もいらっしゃいます。しかしそれは、とても危険です。弊所では、そのようなやり方は絶対にしません。

もし仮に「2」や「3」を済ませたあとに、

  • 「1」の他社からの協力が得られなかった
  • 証明資料の準備が出来なかった
  • そもそも経管の要件を満たしていなかった

という事が判明したらどうするのでしょうか?登記簿謄本を変更し、社会保険にも加入してもらい、手続きがすべて完了した後に、「やっぱり経営業務管理責任者の変更はできませんでした...」となるわけです。とてもリスクがあります。

これが、経営業務管理責任者変更に伴うリスクです。「他社での取締役の経験を使って、経営業務管理責任者を招聘する場合」には、上記のリスクがとても大きいので、専門家の判断を仰ぐようにした方がよいでしょう。

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