『建設業許可を取得したいが、経営業務管理責任者の要件である「経営経験の年数」を満たしていない…』といった課題に直面されている経営者の方も多いのではないでしょうか?
今回、インタビューにご協力いただいた明豊トレーディング株式会社の代表取締役・内山さま、取締役・青木さまも、まさにそのような状況に直面されていた経営陣の一例です。同社では、かつて建設業許可を保有していたものの、役員体制の変更により経営業務管理責任者が不在となり、やむなく許可の返上を選択されました。しかしその後、執行役員の経歴を丁寧に整理・検討した結果、経営業務管理責任者としての要件を満たすことが確認でき、再び、東京都の建設業許可(電気通信工事業)の取得に成功されました。
本インタビューでは、明豊トレーディング株式会社の主たる事業内容や、建設業許可取得に至るまでの経緯、さらには経営上重視されている方針などについて、お話を伺っております。今後、建設業許可の取得を検討されている企業にとって、有益な事例としてご参考いただければ幸いです。
インタビュアー:行政書士法人スマートサイド(横内)
お客さま情報 | 詳細 |
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企業名 | 明豊トレーディング(株) |
取材対象者 | 代表取締役:内山社長/取締役:青木さま |
本店所在地 | 東京都稲城市 |
主な業種 | 電気通信工事業 |
明豊トレーディング(株)について
―本日は、お忙しい中、お時間を頂きまして、ありがとうございます。御社は、地震計の設置や販売を行っているとのことですが、建設業許可取得の話題に入るまえに、まずは、御社の「主な業務」や「成り立ち」について、お話しを伺えますでしょうか?
内山社長:はい。
明豊エンジニアリングの社長が、有志とともに立ち上げたのが、現在の明豊トレーディングです。東五反田の地で36年間、地震計に関する業務を行ってきました。地震計の販売や設置を主な業務としていますが、具体的に言うと、地震が起きたときに振動を感知して、自動的に館内アナウンスを流したり、設備を制御したりするようなシステムです。二次災害の防止という観点から、非常に重要な役割を担っていると考えています。
設備の企画・設計から、実際の設置、そしてその後のメンテナンスまで、一貫して自社で対応できる体制を整えているのが、弊社の特徴です。設置して終わりではなく、その後の点検やメンテナンスも含めて、長くお付き合いできることが、強みです。対応エリアも全国で、最近は地震などの災害も増えている影響か、お問い合わせの数も少しずつ増えてきている実感があります。
社員は現在6名で、30代から60代まで幅広い世代がそろっています。親子ではありませんが、年齢差を越えて仲が良く、とてもアットホームな雰囲気の職場です。毎日、和気あいあいとした中で、それぞれの役割をしっかり果たしてくれています。
青木取締役:創業は昭和57年で、もともと本社は品川区にあったのですが、令和2年に稲城市に移転してきました。地震計のメンテナンス業務を行う中で、使用済みの機器を引き揚げてくることがあります。そうした機器について、「まだ使えるものを、何かの形で安く提供できないか」と考えたことがきっかけで、数年前に古物商の許可も取得しています。
―会社の経営理念や特徴は、ありますか?
内山社長:最近は特に、社内のDX化に力を入れています。というのも、設備の設置やメンテナンスといった業務では、どうしても現場に出ている時間が多くなりますので、社外にいてもスムーズに情報を共有できる環境が必要です。そのため、社内の情報をクラウドで一元管理できるように整備したり、どこからでもアクセスできる仕組みを導入したりと、日々工夫を重ねています。
こうした取り組みを通じて、誰がどこにいても、チーム全体が同じ情報をもとに動ける体制を整えるようにしています。
―内山社長が会社経営において、大事にしていることはありますか?
内山社長:私は、社員一人ひとりの声に耳を傾けることを大切にしています。会社は組織として動いていますが、働く人それぞれに考え方や感じ方の違いがあります。すべての要望に応えることは難しいかもしれませんが、できる限り、皆が誇りを持って働けるような会社でありたいと思っています。
実を言うと、私自身は地震計についてまったく知識がないところからのスタートでした。社長に就任した当初は、業務の流れをつかむだけでも本当に大変で、手探りの日々が続きました。それでも、少しずつ学びながら、社員と一緒に会社を支えていけるよう努力してきたつもりです。
建設業許可の取得について
―御社は、過去に建設業許可を持っていたのですが、一度、取り下げたうえで、再度、取得していますね。その経緯を、お聞かせいただけますでしょうか?
内山社長:はい。以前、建設業許可を取得していた時期がありました。ただ、その後、取締役を全員交代することになり、それにともなって経営業務管理責任者の要件を満たす人がいなくなってしまい、やむを得ず許可を取り下げた経緯があります。
再び許可を取りたいと思い、何件もの行政書士事務所に相談してまわりましたが、「うちは対応できません」と門前払いを受けたりしたこともありました。正直なところ、私たち自身も「もう無理かもしれない」と半ばあきらめかけていました。
青木取締役:私も同じように、何件もの行政書士事務所に断られているうちに、「これはもう、経営業務管理責任者として認められるまでの5年間を待つしかないのかな…」と、あきらめていました。
ちょうどその頃、法改正で経管の要件が緩和されるという話を耳にしていたので、「もしかしたら何とかなるのでは?」という期待もあったのですが、実際には思ったようにいかず、こちらの想定とは違いました。以前から付き合いのある行政書士の先生に相談していたのですが、そこでも固くなに断られてしまい…。
そんな経緯があって、最終的には御社のホームページを拝見し、「ここなら」と思い、問い合わせさせて頂いたのです。
―たしかに、経管の要件が緩和される法改正があったのは事実ですが、運用上は、期待していたのとは程遠く、「許可を取得しやすくはならなかった」というのが私の印象です。最終的には、取締役ではなく、執行役員を経営業務管理責任者にして、建設業許可を取得できたわけですが、許可を取得することができて、よかった点はありますか?
内山社長:建設業許可を取得して、本当によかったと感じているのは、やはり取引先と堂々とお付き合いできるようになった点です。許可を失っていた間は、どこか社員たちにも後ろめたさというか、胸を張れないような空気があったと思います。でも、無事に許可が取れたことで、社内全体が明るくなりましたし、みんなが本当に喜んでくれました。
実際、許可がないことで話が途中で立ち消えになってしまった案件もありましたので、そういう「釣った魚を逃す」ようなことがなくなると思うと、やはり取得できてよかったなと心から思っています。
青木取締役:建設業許可を失った際には、取引先から叱責を受けるなど、厳しい状況にあったのも事実です。この点については、建設業許可に関わる事業の承継の在り方について、勉強不足だったと感じています。会社・組織として、建設業許可を維持していくためには、どのような視点が必要かが、当時は十分に理解できていなかったと思います。
本来であれば、経営業務管理責任者の要件を満たす人材を育てながら、数年かけて計画的に役員体制を移行していくのが理想です。それを十分に準備しないまま取締役を交代してしまったことは、今振り返ると大きな反省点です。
内山社長:会社自体が少人数ですので、いろいろな業務が兼務になりがちです。そういった意味で、業務の役割分担が難しい面もありますが、現在は、執行役員が経営業務管理責任者としての役割を担い、しっかりと責任をもって対応してくれています。
今後の展望や将来像について
―御社のそういった経験も踏まえて、これから建設業許可を取得したいと考えている人に対して、何かアドバイスみたいなものを頂けますでしょうか?
青木取締役:私から言えるのは「計画的に」の一言に尽きます。何よりも計画性を持って、進めるべきです。建設業許可を再度、取得しなおしたことを契機に、明豊トレーディングが「独自にどうやって生き残っていくか」というフェーズに入ってきているように思います。
内山社長:最近、新たにお取引を開始させていただいた会社は、非常にブランド力のある企業で、当社にとっても大きな励みになっています。せっかく建設業許可を再取得できたことですし、これを機に、より積極的に営業活動を展開していきたいと考えています。
また、建設業許可の取得を目指すにあたっては、これまでの業務実績や、今後のビジョンをしっかりと持っておくことが非常に大切だと感じています。実際、私たちの場合も「要件を満たしていないから難しい」と言われるところからのスタートでしたので、当初は本当に藁にもすがる思いでした。そんな中で御社に出会い、親身に話を聞いていただきながら申請を進めることができたのは、非常に心強く、今振り返っても本当に依頼してよかったと感じています。
―執行役員を経営業務管理責任者にして建設業許可を取得したいというご相談は、とても増えています。そういった意味で、私たちも「今よりもっと、情報発信をしていかなければ」と思っています。今回の御社のインタビュー記事が、同様のことで困っている会社の参考になれば幸いです。本日は、お忙しい中、お時間を頂きまして、誠にありがとうございました。
内山社長・青木取締役:こちらこそ、ありがとうございました。
【インタビューを終えて】
近年、取締役が経営業務管理責任者の要件を満たさない場合に、執行役員を経管とする形で建設業許可の取得を目指すご相談が増えてきています。この手法は「新規許可取得」の場合に限らず、「経管の変更」や「代替わり」といった、役員体制の「変更」の際にも活用できている実績があります。
今回インタビューにご協力いただいた明豊トレーディング株式会社も、まさにそうした状況に直面されていましたが、社内の体制を整理し、執行役員を経営業務管理責任者とすることで、無事に許可を再取得されました。
そもそも「執行役員でも経管になれる」という発想自体が、まだ多くの企業にとっては浸透していないのが現状です。だからこそ、この事例は、同様の課題を抱える企業にとって大きな気づきと学びになるはずです。明豊トレーディング様の取り組みが、今後建設業許可を目指す方々の一助となれば幸いです。
行政書士法人スマートサイド:横内