
東京都建設業許可取得の専門家。「工事実績のない会社の特定建設業許可取得」「会社設立直後、2か月で特定建設業許可取得」「会社分割に伴う新設子会社に特定許可を承継させる」など、特定建設業許可の取得が得意。財産的要件のクリアが厳しい会社には、資本金4000万円での子会社設立をアドバイスすることも。特定建設業許可を最短で取得したインタビューに関する記事はこちら。
このページは、建設業許可取得の専門家である行政書士法人スマートサイドが、実際にお客さまから相談を受けた事例をモデルに、特定建設業許可の取得に成功したケースを紹介するとともに、特定建設業許可取得のための要件を「詳細かつわかりやすく」解説したページです。
特定建設業許可の意味や基本を理解したい人は、「特定建設業許可を今すぐ取得したい人のための専門家による要件・手続き徹底解説」のページも参考にしてみてください。
✅ 特定建設業許可の要件を知りたい
✅ 特定建設業許可を取るためには、どんな要件が必要なの?
✅ うちの会社は特定建設業許可をとれるの?要件は何がたりないの?
と特定建設業許可の要件については、皆さんとても興味があるようです。特定建設業許可の要件は、ずばり以下の通りです。
(1)技術者が1級の国家資格を持っていること
(2)直近の決算で以下の4つの財産的要件を満たしていること
・欠損の額が、資本金の額の20%を超えないこと
・流動資産÷流動負債の比率が75%以上であること
・資本金が2,000万円以上であること
・自己資本が4,000万円以上であること
なお、特定建設業許可を取得するには「経営業務管理責任者の要件」「誠実性の要件」「欠格事由に該当しないこと」という建設業許可を取得するための一般的な要件も充足する必要があります。とくに経営業務管理責任者の要件は、取締役としての5年以上の経営経験が必要になるなど、とても厳しい条件があります。
(1)経営業務管理責任者の要件(≒取締役としての5年以上の経験)
(2)独立した営業所の要件
(3)欠格事由に該当しないこと
しかし、これらは建設業許可取得の要件であり、特定建設業許可を取得するための「特別な要件」ではないことから、このページでは説明を割愛させていただきます。このページでは、特定建設業許可を取得するための「財産的要件」と「技術者要件」に絞って解説いたします。経営業務管理責任者の要件でお困りの人は、ぜひ、「経営業務管理責任者の要件【徹底解説】」ページを参考にしてください。
「特定建設業許可取得を取りたい!」その相談の中身とは?
特定建設業許可取得に関する相談内容(3つの懸念事項)
今回のお客さまは、事前予約制の有料相談(1時間11,000円)をお申込みいただき、弊所にて、お打ち合わせを実施したお客さまです。事前にメールのやり取りでさまざま情報を頂いていたため、短時間かつ密度の濃い打ち合わせを行うことができました。初回の打ち合わせの段階で、懸念事項を共有し、手続きをどのように進めれば、特定建設業許可取得の可能性を高めることができるかという視点から、下記のような問題点を共有することができました。
会社所在地 | 東京都千代田区 |
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取得希望業種 | 特定建設業許可(建)(大)(屋)(タ)(鋼)(内) |
相談内容 | 建設業許可の取得を検討しているが、3点、懸念事項がある。
この3点をクリアできるのであれば、行政書士法人スマートサイドにお願いをしたい。 |
このお客様の懸念事項、問題点は、面談当初からかなり明確になっていました。相談内容にある通り、
- 会社としての過去の実績がないこと
- 一般許可を取得せずに、すぐにでも、特定建設業許可を取得したいこと
- 自分の会社は、特定建設業許可の要件を満たしているのか?
の3点です。
<1点目>:過去の工事実績がなくても特定建設業許可を取れるか?
まず、会社として過去の工事実績がないのであれば、「常勤役員等(旧:経営業務管理責任者)」の要件を満たす人を、会社の取締役に迎え入れなければなりません。この点については、知り合いに「常勤役員等(旧:経営業務管理責任者)」の要件を満たす人がいて、その方に取締役になってもらえるとのことでした。また、会社として過去の工事実績がない以上、専任技術者の実務経験の証明が難しくなりそうです。この点については、1級建築士の資格を持っている人を近々、採用するということでしたので、実務経験証明の必要性もありません。
ということで1点目の「会社としての過去の実績がないこと」については、クリアです。
<2点目>:はじめての許可でいきなり特定許可を取得できるか?
<3点目>:特定建設業許可取得の要件をクリアできるか?
『財産的要件』については、税理士と相談し、なるべく早い段階でクリアできるように準備するとのことでした。
以上の3点について、「問題点」と「その問題点をクリアするための手法」について、認識を共有できたので、弊所にて特定建設業許可取得のご依頼を受ける運びとなりました。なお、すでに一般建設業許可を取得している会社が、一般建設業許可を特定建設業許可に切り替える際の手続きについては、「特定建設業許可の要件、丸わかりガイド:申請手順とチェックポイントを成功事例とともに詳細解説」のページをご覧ください。
1.過去の実績がなくても特定建設業許可を取得できる?
この会社は、建設業のコンサル的な仕事をメインとしていたので、コンサル業としての売上はありますが、「実際に工事を請負い施工した実績」はありません。このような会社が建設業許可を取得するには、自社の人材だけでは足りません。常勤役員等(旧:経営業務管理責任者)の要件を満たす人を取締役に招聘し、専任技術者の要件を満たす人を社員として採用しなければなりません。
(1)常勤役員等(旧:経営業務管理責任者)の取締役への招聘
まずは、常勤等役員(旧:経営業務管理責任者) についてです。経営業務管理責任者の要件を満たすには、原則として5年以上の建設業の経営経験がなければなりません。
この会社の場合、
- 千葉県知事許可を持っていた会社で
- 5年以上の取締役経験のある方
が知り合いにいらっしゃったので、その方に取締役に就任し、常勤役員になって頂くことで、経営業務管理責任者の要件をクリアすることが出来ました。なお、この方が、千葉県知事許可を持っていた会社で取締役であったことを証明するため「千葉県の建設業課への許可取得期間の確認」と「会社の閉鎖事項証明書の取得」といったことを行いました。
この点の事前確認は非常に重要です。せっかく取締役に就任してもらったのに「実は常勤役員等(旧:経営業務管理責任者)の要件を満たしていませんでした」とか「建設業許可を取ることができませんでした」とならないように、必ず事前の確認を慎重に行う必要があります。
(2)1級建築士の採用
専任技術者の要件を証明するには
- 国家資格があること
- 過去の工事実績を証明すること
の2点の方法がありますが、この会社は、会社としての過去の実績がそもそもないのですから「過去の工事実績を証明する」ことはできません。そのため、国家資格がある方を採用するしか方法がありませんでした。特定建設業許可を取得するにあたって、人材を募集していたところ、「1級建築士の資格」を持っている方がいらっしゃるとのことでしたので、その1級建築士の方を常勤の社員として採用して頂くことになりました。
2.特定建設業許可を取得するための特殊な要件
続いて、特定建設業許可の要件についての解説です。このページの冒頭にも記載しましたが、特定建設業許可を取得するために必要な要件は、<技術者(人的)要件>と<財産的要件>の2点になります。この会社のように、「会社として過去の工事実績」がなくても、建設業許可を取得することが出来ます。もっとも、特定建設業許可を取得するには、一般建設業許可を取得するよりも、より厳格な要件が設けられています。具体的に見ていきたいと思います。
(1)特定建設業許可取得のための「財産的4要件」
特定建設業許可を取得するための財産的要件は、
- 欠損比率20%以下
- 流動比率75%以上
- 資本金額2000万円以上
- 純資産合計4000万円以上
の4つの要件を満たすことが必要です。
この会社の場合、設立後間もないこともあって、「3.資本金額」と「4.純資産合計」の要件をクリアできていませんでした。通常であれば、ここで特定建設業許可の取得をあきらめるところですが、どうしても、特定建設業許可を取得したいとのことでしたので、税理士と相談し、この4つの要件をクリアできるように、資金を調達しました。資本金額については、登記の変更も必要でしたので、司法書士にお願いし、登記簿謄本の変更も行っていただきました。
(2)特定建設業許可取得のための「人的要件」
特定建設業許可を取得するには、専任技術者が「1級の国家資格者」でなければなりません。例外的に、2級の国家資格者でも、きちんとした要件を証明すれば、特定建設業許可を取得できることがありますが、可能性としてはとても低いので、特定建設業許可を取得するには「1級の国家資格者」が必要であると覚えておいていただいて差し支えないと思います。この事案では、「1級の建築士」を新たに採用したので、特定建設業許可取得に必要な技術者の要件はクリアしていました。
3.“急ぎ”で特定建設業許可を取得するための裏技
(1)通常のケース
通常のケースでは、一般建設業許可を取得してから、数年もしくは数か月して、一般建設業許可から特定建設業許可に切り替える(般特新規申請をする)ことが多いです。もっとも、
- 「一般を取得してから特定を取得する」となると手続き的に面倒である
- すこしでも早く「特定」を取得したい
といった理由から、今回のお客さまのように一般建設業許可を取得することなく、はじめての許可で特定建設業許可を取得したいと熱望される会社もあります。もちろん「急ぎでない」ということであれば、「一般を取得してから特定を取得する」という段階を踏んでいけばよいのですが、今回は、金額の大きい工事の受注が迫っているため、そのような悠長なことを言っている時間もありませんでした。
特定建設業許可を取得するには、直前の確定した決算で、上記の財産的4要件を満たしていなければなりません。あくまでも「申請時点で満たしている」ということを証明するのではなく「直前の確定した決算の時点で満たしている」ことが必要です。
この会社の場合、決算は6月末決算でした。しかし、今年の6月末時点では、上記4要件を満たしていなかったため、本来であれば、次の決算である翌年の6月末を迎えてからでないと、特定建設業許可を取得することが出来ません。しかし、前述の通り、少しでも早く特定建設業許可を取得したいわけですから、翌年6月まで待つことが出来ません。
(2)決算期を意図的に前倒しする「特殊なケース」
そのような場合には、意図的に決算期を前倒しして、決算期を早めて特定建設業許可を取得するという方法をとることが出来ます。具体的には、この会社の場合、今年の6月末決算時には4要件を満たしていなかったものの、同じ年の11月には、4要件ともクリアできるようになったわけですから、翌年6月(次の決算)を待たずに、決算期を今年の12月末に変更して、12月末決算の財務諸表を使って、特定建設業許可を取得することが可能になったわけです。このように、すこしでも早く特定建設業許可を取得したいという会社には、あえて、決算期を前倒しするというった方法をとることをお勧めいたします。
決算期を10か月前倒ししたうえで、特定建設業許可取得に成功した事例のご紹介は、こちらのページを参考にしてください。
4.要件確認⇒課題をクリア⇒特定建設業許可を無事取得
上記のような特定建設業許可取得のための要件を確認し、役員への就任登記、1級建築士の採用、財産的要件を充足するための資金調達、決算期変更という方法を採用し、東京都庁に特定建設業許可の申請をおこないました。都庁への申請の際には、特に不備を指摘されることもなく、無事に特定建設業許可を取得することが出来ました。
お客さまのご希望通り、「建築工事」「大工工事」「屋根工事」「鋼構造物工事」「タイル工事」「内装工事」の6業種で、特定建設業許可を取得することができました。
特定建設業許可を取得したいとお考えのみなさんへ
特定建設業許可を取得するには、一般建設業許可を取得するのと異なり、<技術者要件>と<財産的要件>の2つをクリアしなければならないということが、お分かりいただけたでしょうか?
本件は、
- 会社としての過去の実績がないので、常勤役員等(旧:経営業務管理責任者)と専任技術者を新たに採用しなければならなかったこと
- 一般許可を経ずして、特定許可を取得するため、特定許可取得のための技術者要件・財産的要件をクリアする必要があったこと
- 急ぎで取得するために、決算期の前倒しを行ったこと
など、特定建設業許可を取得するために、さまざまな工夫が必要な事案でした。
とくに
- 常勤役員等の経験が(千葉県知事許可時代の取締役としての経歴)がきちんと証明できるか?
- あらたに採用した専任技術者の常勤性の資料に問題はないか?
- 特定建設業許可の財産的要件に問題はないか?
など、チェックする項目がたくさんあったため、建設業許可の取得を専門にしていない一般的な行政書士事務所では、特定許可の取得が難しい事案であったと思われます。こういった難しいケースにおいては、やはり私たちのような専門家の力が必要になるのではないでしょうか?
このように行政書士法人スマートサイドには、特定建設業許可を取得することはもちろんのこと、「急いで、特定許可を取りたい」「財産的要件に不安があるがどうしても特定を取りたい」「一般許可を経ずして、いきなり特定許可を取りたい」といったご要望にも、対応できる経験と実績があります。特定建設業許可取得でお困りの方は、ぜひ、下記問い合わせフォームからお問合せ下さい。