執行役員を経営業務管理責任者にして、東京都の建設業許可を取得した事例を詳細解説

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【監修者】行政書士法人スマートサイド:代表行政書士 横内 賢郎(よこうち けんろう)

東京都の建設業許可取得の専門家。「執行役員を経営業務管理責任者にして建設業許可を維持・取得する」という難易度の高い申請に何度も成功。数名程度の小規模会社から、技術職員数100名を超える大規模会社に至るまで、経管の要件の証明については、都内有数の実績を誇る行政書士事務所。「建設会社の社長が読む手続きの本(第2版)」を出版インタビューは、こちら。

令和2年10月に建設業法が改正され、「経営業務管理責任者」の要件が緩和されてました。しかし、運用の仕方には、各自治体ごとにばらつきがあるばかりではなく、事実上、要件の緩和措置が認められないなど「建設業許可を取得することが簡単になった」とは言い難い状況です。

そんななか、経営業務管理責任者を取締役登記せず、執行役員の地位のまま、東京都の建設業許可を取得することに成功しました。いわゆる「建設業法施行規則第7条1号イ(2)」に該当する事例です。

建設業法施行規則 第7条1号イ(2)

建設業に関し5年以上、経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として経営業務を管理した経験を有する者

従来までは、法人が建設業許可を取得する場合、経営業務管理責任者は「取締役」であることが必須でした。しかし、「取締役」ではない「執行役員」を経営業務管理責任者として建設業許可を取得することができたのです。このページでは、実際に許可を取得した事案をベースに、執行役員を経営業務管理責任者として建設業許可を取得するには、どのような書類が必要か?を中心に記載していきたいと思います。

(YouTube解説動画のご案内)

執行役員を経営業務管理責任者にして建設業許可を取得するための条件を、動画で視聴したいという人は、以下のYouTubeをご覧ください。取締役登記されていない「執行役員」を経営業務管理責任者にして、建設業許可を維持・取得する方法を解説しています。「組織図」や「業務分掌規程」などの必要書類を画面共有しているほか、スマートサイド建設(株)という架空の事例をもとに、テクニカルマネジメント部の執行役員である鈴木一郎さんが、どういう理由で経管になることができるのかを、わかりやすく説明しています。

相談内容:執行役員を経営業務管理責任者にしたい

概要

会社所在地 東京都港区
業種 電気工事業・電気通信工事業

相談内容

相談内容 新しい事業を展開するために、電気工事と電気通信工事の建設業許可を取得したい。

  1. まったくの新しい事業の立ち上げであるため、工事の経験や実績は、ゼロです。
  2. 過去に他県で建設業許可を持っていた人を「経営業務管理責任者」にしたいです。
  3. その人を「取締役」ではなく「執行役員」として会社に招き入れたいです。

以上のような状況ですが、東京都の建設業許可を取得することは可能でしょうか?

申請内容

申請内容
  • 建設業許可新規申請(電気+電気通信工事業)

執行役員を経営業務管理責任者にするための事実関係を整理

(1)工事の経験や実績はゼロ

まったくの新しい事業の立ち上げであるため、工事の経験や実績は、ゼロです」という点について。今まで業務として建設業を行ったことがなく、「工事を請負った実績のない」とのことですが、仮に建設業の経験や工事を請負った実績がなかったとしても、

  • 「経営業務管理責任者」の要件を満たす人
  • 「営業所技術者」の要件を満たす人

​を外部から招き入れて、会社の社会保険に加入してもらい建設業許可を取得するといったことはよくあります。そのため、申請会社(建設業許可を取得したい会社)自体に、工事の実績・建設業の経験がなくても、建設業許可を取得することは可能です。

(2)執行役員=過去に経管の経験あり

過去に他県で建設業許可を持っていた人を経営業務管理責任者にしたい」という点について。自分の会社に経管や専技の要件を満たしている人がいなければ、外部から招聘(招き入れて)、建設業許可を取得する方法があります。この点については、保管している書類や過去の許可取得状況を確認してみないことには何とも言えません。過去に他県で建設業許可を持っていたとしても、それだけで、東京都でも認められるとは限らないからです。

「実際にお客様が保管していた『過去に他県へ提出した申請書類』」および、「他県での許可取得状況」をお預かりし、確認・調査しました。そうしたところ、お客さまから頂いた書類を東京都への証明に用いて、東京都で建設業許可を取得できると判断しました。

(3)あくまでも取締役ではなく執行役員として

その人を取締役ではなく執行役員として会社に招き入れたい」という点について。これは建設業施行規則第7条1号イ(2)に該当する部分です。この点については、「経営業務管理責任者は取締役でなければならない」というのが従来からの取り扱いであったため、「執行役員」として経営業務管理責任者になれるのか?なれるとした場合、どんな資料を用意すればよいのか?など、調査・確認が必要になる旨、お伝えしました。

そのうえで、最悪のケースとして、「経営業務管理責任者は、絶対に取締役でなければならない」となった場合には、新たに取締役として登記をしていただくという条件のもとに、ご依頼を受任する運びとなりました。

執行役員を経営業務管理責任者にするためには?

上記のように(1)、(2)については、私の経験上問題ないと判断できましたが、(3)については、

  1. 手引きの記載の確認
  2. 必要書類(書類の中身の精査)
  3. 都庁の事前審査
  4. 都庁への本申請

といった順番で、作業していくことになりました。

1.手引きの記載

東京都の手引には

「常勤役員等」とは、法人である場合においてはその役員のうち常勤であるものをいい、「役員」とは、業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいいます。これらに準ずる者とは、執行役員等については原則含みませんが、取締役会設置会社において、建設業の経営業務の執行に関し、取締役会の決議を経て取締役会又は代表取締役から具体的な権限委譲を受けた執行役員等は含まれます。

と記載されています。

(原則)

ここで注意しなければならないのは、執行役員は原則として「常勤役員等(≒経管)」にはなれないと明記されている点です。多くの方が、令和2年10月の建設業法改正で、「経管の要件が緩和された=建設業許可を取得しやすくなった」と勘違いをしています。手引きの記載を見ても明らかなとおり、執行役員の地位では、常勤役員等≒経管になることができないのが原則です。

(例外)

但し、例外的に、取締役会設置会社において、

  1. 建設業の経営業務の執行に関し、
  2. 取締役会の決議を経て
  3. 取締役会又は代表取締役から具体的な権限委譲を受けた

執行役員について、経営業務管理責任者になることができます。このお客様の場合、「取締役会設置会社」であったため、次に進むことができましたが、仮に「取締役会設置会社」でなかった場合には、執行役員の地位で許可を取得することはできませんでした。

2.必要書類(書類の中身の精査)

必要書類や準備すべきものについては、下記の通りです。

  • 登記簿謄本
  • 組織図
  • 業務分掌規程
  • 取締役会規則
  • 執行役員規定
  • 取締役会議事録

上記の必要書類については、「ただ準備をすればよい」というものではなく、書面を通じて、「執行役員が、建設業の経営業務の執行に関し、取締役会の決議を経て取締役会又は代表取締役から具体的な権限委譲を受けている」ことを証明できなければなりません。

【書類】 【内容の確認事項】
登記簿謄本 執行役員の地位で経営業務管理責任者になるには「取締役会設置会社」であることが必要です。「取締役会設置会社」であることを、登記簿謄本で確認します。
組織図 会社組織の部門の中に「建設業部門」があること、執行役員が「建設業部門の最高責任者」として、取締役会直下の地位にあることを確認します。
業務分掌規程 「建設業部門」が、建設業の一部のみ(たとえば工事の資金調達や、人事管理など)を掌握する部門でなく、当該会社の建設業に関するすべての業務を掌握する部門であることを確認します。
取締役会規則 取締役会が、執行役員の業務権限について具体的に委譲し、執行役員の選任・監督について責任を負うことを確認します。
執行役員規定 執行役員が、取締役会決議によって選任され、取締役会または代表取締役から具体的な権限委譲を受ける立場にあることを確認します。
取締役会議事録 当該執行役員(具体的な○○さん)が、取締役会決議において、建設業部門に関する工事請負契約の締結や工事の施工に関する具体的な権限を授けられたことを確認します。

注意して頂きたいのは、

  • ○○の書類があれば、許可が通る
  • ○○の書類があれば、経営業務管理責任者として認められる

といった関係性にはない、という点です。繰り返しになりますが、本来、執行役員の地位では、経営業務管理責任者にはなれないのが原則です。例外的に取締役会設置会社において、建設業の経営業務の執行に関し、取締役会の決議を経て取締役会又は代表取締役から具体的な権限委譲を受けた場合にのみ、執行役員が経営業務管理責任者になれるにすぎません。そのため、上記の表で記載した書類のうち、「どれか1つあればよい」とか「○○があればよい」とか「○○さえあれば許可が取れる」といったわけではないことを十分に理解してください。

全体として、執行役員が経管たる地位にふさわしいポジションにあるか否かについて、きちんと書面を通じて証明する必要があります。

3.都庁の事前審査

本件のように「執行役員の地位で経営業務管理責任者になる」といった特殊な申請の場合には、都庁建設業課への事前審査が必要になります。通常の本申請に入る前に、上記書類を整理して持参し、実際に「執行役員の地位のままで、経営業務管理責任者の要件を満たしているか?」について、確認をしてもらいます。

その確認(事前審査)を経た後で、「当該執行役員が経営業務管理責任者になることができる」旨の、お墨付きを得たうえで、通常の本申請の手続きに入ることになります。そういった意味において、「執行役員を経営業務管理責任者にして、建設業許可を取得する」ためには、まずは「事前審査」を経たうえで「本申請」に入るといった2段階の手続きを踏むことになります。

このお客様の場合、取締役会設置会社であったことはもちろんのこと、「組織図」「業務分掌規程」「取締役会規則」「執行役員規定」「取締役会議事録」について、すべて、要件を満たす形で準備をされており、上記の書面から、「建設業の経営業務の執行に関し、取締役会の決議を経て取締役会又は代表取締役から具体的な権限委譲を受けた」ということを証明できたため、事前審査を通ることができました。

4.都庁への本申請

事前審査を経たあとの本申請です。ここからが通常の申請手続きになります。当初のご相談内容にあったように、(1)まったくの新しい事業の立ち上げであるため、工事の経験や実績がゼロであること、(2)過去に他県で建設業許可を持っていた人を「経営業務管理責任者」にすることについては、特に問題になることもなく、認めてもらうことができました。この(1)(2)については、弊所の経験に基づく予測通りであったということができます。

執行役員を経管にして建設業許可を取りたいとお考えの方へ

このページを最後までご覧いただき、ありがとうございます。ここまでお読みいただいたということは、「執行役員を経営業務管理責任者にして、建設業許可を取得できるのか?」と真剣に検討されているのではないでしょうか。

実際に、行政書士法人スマートサイドでは執行役員を経営業務管理責任者として認められ、許可を取得できた実績があり、その後も複数の事例で成功を重ねています。単なる理論や解説ではなく、実務に裏打ちされた経験があるからこそ、安心してご相談いただけます。

もちろん、会社の規模や役員構成によって最適な進め方は異なります。大規模会社で執行役員を経管にした事例もあれば、規模が小さい会社では「取締役に登記して経管とする」など、別の解決方法をご提案するケースもあります。弊所にご相談を頂ければ、いままでの申請経験をもとに、御社の状況に応じた最適な方法を一緒に見つけることが可能です。

許可申請は「できるのか?できないのか?」の判断が非常に難しい部分ですが、当法人はこれまでの豊富な経験をもとに、確実性の高い方法をアドバイスいたします。

  • 自社で経管になれる人はいないのか?
  • 他社から招き入れる場合、その人は、本当に経管要件を満たしているのか?
  • 取締役として招きいれるしか、方法はないのか?
  • 現在の経管が退職する場合、建設業許可は維持できるのか?

といったように「自社の状況で本当に可能なのか?」と少しでも疑問をお持ちであれば、事前予約制の有料相談をお申込みください。私たち行政書士法人スマートサイドは、東京都の建設業許可を専門に扱う実務のプロフェッショナルとして、相談者1人1人への適切な対応、質の高い面談時間の確保という見地から、「無料」ではなく「有料」で御社の御悩み解決のお手伝いをさせて頂きます。御社にとって最もスムーズで確実な許可取得の道を一緒に探していきましょう。

執行役員を経管にして建設業許可を取得したいとお考えの方は、ぜひ下記のお問い合わせフォームからご連絡ください。

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