前任の担当者が作成した書類を修正。無事、経営事項審査を完了することができました!

これから経営事項審査を受けたいと考えている人にとって重要なのが、経営事項審査の際に提出する書類は、すべて経営事項審査用のルールに則って作成しなければならないということです。

毎年提出している決算変更届(事業年度終了報告)の書き方にも注意が必要です。なぜなら、経審を受けるには、財務諸表や工事経歴書を「税抜表記」で作成していなければならないからです。

経審の際に、決算変更届(事業年度終了報告)で提出した財務諸表や工事経歴書の記載に誤りが発覚すると、訂正をしなければなりません。

経営事項審査の場で簡単に訂正できればよいのですが、別途、訂正届(別紙8の訂正)の提出を求められ「訂正届を提出するまでは、経営事項審査を受け付けてもらえない」といったパターンもあります。

せっかく、時間をかけて準備をして、「いざ!経審!」と準備万端で審査に臨んだにも関わらず「決算変更届の記載に誤りがあったからやり直し」となってしまったのでは、いままで費やしてきた時間も、注いできた労力も、もったいないですね。1度でも、経営事項審査の難しさや書類準備の大変さを味わったことがある人ならわかるかもしれませんが、まさに心が折れそうになる瞬間です。

今回は、前任の担当者さんが提出した決算変更届の訂正を求められたケースのご紹介です。もちろん弊所が訂正を行うことによって、経営事項審査を無事完了することができました(なお、場合によっては、審査の際に、その場で、訂正をすることが認められず、訂正が終わるまでは、経営事項審査の受付を認めてもらえないというケースもあります)。

前任者からの切り替え!?経審に関するご相談の概要

概要

会社所在地 東京都中野区
業種 防水工事業

相談内容

相談内容 中野区に会社があるので、中野区の防水工事の入札に参加したい。経営事項審査+入札参加資格申請について、お付き合いのある行政書士に相談したが「よくわからない」とのことだったので、行政書士法人スマートサイドに依頼をしたい。

できれば、経営事項審査も入札参加資格申請も合わせて、一括でお願いできればと思っている。

申請内容

申請内容
  • 経営事項審査+入札参加資格申請

経営事項審査を受けるにあたっての弊所の対応

「中野区で防水工事の入札に参加したい」という目的意識のはっきりした事業者さまからのご相談でした。経審や入札参加資格申請について、ご自身でも少し勉強している様子で、お付き合いのある行政書士に相談したところ、専門外であるという理由で、代行申請をお願いすることができなかったとのこと。確かに、経審や入札参加資格については、専門的知識が必要なため、行政書士であれば、誰でもできるといったものではありません。

面談の際には、過去に都庁に提出している建設業許可関連の申請書類一式をお持ちいただき、漏れがないかを確認させて頂きました。

経営事項審査は、決算変更届はもちろんのこと、「代表者の変更届」「本店所在地の変更届」「経管・専技の変更届」などといった、変更届をもれなく提出していることを前提に審査がなされますので、弊所では、事前相談の際に、過去の提出書類に漏れがないかを確認しています。

このお客様の場合、過去に提出している変更届などに漏れはなかったので、お客様のご希望通り、「経営事項審査」と「入札参加資格申請」を、併せて弊所にて受任する運びとなりました。

経営事項審査を受ける際の書類作成のチェックポイント

その1:「税込み」か「税抜き」か?

経審を受ける際には「税抜き表記」であることが必須

まず、前提として経審を受ける際のルールとして「財務諸表」や「工事経歴書」は、税抜きで作成しなければなりません。これは結構有名な経審ルールですので、「知らなかった!?」という人は、要チェックです。

経審を受けない場合、決算変更届の際に提出する「財務諸表」「工事経歴書」は、税込みでも税抜きでも構いません。

一方で、経審を受ける場合、決算変更届の際に提出する「財務諸表」「工事経歴書」は、税抜きでなければなりません。

経審を受けない場合→ 「税込み・税抜き」どちらでも可
経審を受ける場合→ 「税抜き」であることが必須

なぜ、経審を受ける際には「税抜き表記」であることが必須なのか?

それでは、なぜ、経審を受ける際には、財務諸表や工事経歴書は、税抜き表記で統一しなければならないのでしょうか?

これは経審の評価の仕組みと関係してきます。皆さんご存知の通り、経審を受審すると総合評定値P点という点数が付与されます。P点が高い方が会社としての評価が高く入札に有利になるというイメージです。

このP点の算出方法は、

  • (X1×0.25)+(X2×0.15)+(Y×0.2)+(Z×0.25)+(W×0.15)

という計算式で算出されます。

この中のX1という評価項目は、「工事業種別の完成工事高」を示しています。ここでは簡単に「完成工事高の額」が、経営事項審査の結果であるP点に影響を及ぼすと覚えておきましょう。

もし仮に、経審を受ける際の書類(財務諸表や工事経歴書)の記載の仕方が、『「税込み表記」でも「税抜き表記」でもどちらでも構わない』といったあいまいなものだったらどうでしょう?

たとえば、

  • とび・土工・コンクリート工事の年間売上が3.000万円(税抜き)の会社があった場合

消費税込みで書類を作成したA社の年間売上高が3.300万円(税込み)、消費税抜きで書類を作成したB社の年間売上高が3.000万円(税抜き)となり、違いが出てきてしまいます。

A社→税込み表記 とび・土工工事の完成工事高=3.300万円
B社→税抜き表記 とび・土工工事の完成工事高=3.000万円

完成工事高が同じはずなのに、税抜き表記にするか?税込み表記にするか?によって、X1ひいてはP点が変わってくるのは、おかしいですね。

経営事項審査は、公共工事を落札する際の入札の基準になるP点を算出するための審査ですので、公平・公正に行われなければなりません。にもかかわらず、「税込み表記」の方が有利で、「税抜き表記」の方が不利となったのでは、公平な審査を行うことができません。

そのため、経営事項審査を受ける際には、申請書類は「税抜き」で作成するように全国統一のルールが適用されているのです。

本件では…

このお客様からご依頼を頂いた本件において、前任の担当行政書士さんが作成した決算変更届は、すべて「税込み」で作成されてありました。

  • 前任の行政書士さんが、「経審=税抜き」というルールを知らなかったのか?

それとも、

  • 決算変更届を作成した時点では、経審を受けることを予想していなかったため、税込み表記で作成したのか?

どちらかは、わかりませんが「経審を受ける予定がある」もしくは「公共工事の入札に興味がある」といった場合には、決算変更届を作成するときから、「財務諸表」および「工事経歴書」については「税抜き」で作成するように心がけてください。

その2:経審用工事経歴書の書き方

経審を受ける際には、「税込み」「税抜き」だけでなく、工事経歴書の書き方にも工夫が必要です。

経審を受けない場合、元請・下請に関係なく、金額の大きい順に10件程度記載すればOKです。

しかし、経審を受ける場合には、単純に金額の大きい方から10件記載する…という記載の仕方では、やり直しになってしまいます。以下では、(1)と(2)の順番で、経審用の工事経歴書の記載の仕方について、解説していきます。

(1)まずは、元請工事の記載を!

経審を受ける際には、金額の大きい、小さいに関係なく、

  1. まずは元請工事を
  2. 元請工事の金額が大きい順に
  3. 元請工事の総合計の7割に至るまで

記載することが求められます。

たとえば、元請完成工事高3.000万円、下請完成工事高7.000万円、合計完成工事高1億円の内装工事業者さんの場合。

まずは、元請工事の金額の大きい順に、元請工事の7割=2.100万円に達するまで記載します。

(2)続いて、元請、下請に関係なく、金額の大きい順に!

(1)のルールに従って、元請工事を2.100万円を超えるまで記載したら、次は、

  1. 元請・下請に関係なく
  2. 金額の大きい工事から順に
  3. 総完成工事高の7割に至るまで

工事を記載します。文章で読んでいるとちょっと難しいので、実際に、金額を使ってみていくことにしましょう。

経審を受けない場合の工事経歴書

経審を受けない場合の工事経歴書の記載は、元請・下請に関係なく、金額の大きい方から順に10件程度記載すればOKですので、以下のようになります。

経審を受けない場合の工事経歴書(記入例)

NO 元請・下請 金額(税抜き表記)
下請① 2000万円
下請② 1510万円
元請① 1500万円
元請② 550万円
元請③ 450万円
元請④ 430万円
下請③ 350万円
元請⑤ 300万円
下請⑤ 290万円
10 下請⑥ 280万円

どうでしょうか?元請・下請に関係なく、金額の大きい方から10件程度の記載になっていますね。

※経営事項審査を受ける際には、上記の工事経歴書を経審用のルールに書き換えなければなりません。

経審を受ける場合の工事経歴書

まずは、(1)のルールに従って、元請の金額が、元請工事の7割になるまで記載しましょう!

そうすると、元請①、元請②、元請③を記載したところで、元請①~③の合計が2500万円となり、元請の7割(=2100万円)を超えることができました。

上記(1)で説明した元請工事の記載は、いったんここでストップです。

NO 元請・下請 金額(税抜き表記)
元請① 1500万円
元請② 550万円
元請③ 450万円

続いて、NO4以降は、元請・下請関係なく金額の大きい方から、総完成工事高(1億円)の7割である7000万円を超えるまで記載します。

NO 元請・下請 金額(税抜き表記)
下請① 2000万円
下請② 1510万円
元請④ 430万円
下請③ 350万円
元請⑤ 300万円

NO8を記載したところで、NO1~NO8の記載が、7090万円となり、総完成工事高の7割である7000万円を超えたので、工事経歴書の記載は、ここで終了ということになります。

完成形は、以下の通りとなります。

経審を受ける場合の工事経歴書(記入例)

NO 元請・下請 金額(税抜き表記)
元請① 1500万円
元請② 550万円
元請③ 450万円
下請① 2000万円
下請② 1510万円
元請④ 430万円
下請③ 350万円
元請⑤ 300万円

【経審を受けない場合の工事経歴書(記入例)】と【経審を受ける場合の工事経歴書(記入例)】を比較してみて、如何でしょうか?元請工事と下請工事が入り組んだ記載になっているだけでなく、「金額が大きい方から順番に記載する」といった単純な書き方でないことがお分かりいただけるかと思います。

あくまでも例題として提示した工事経歴なので、わかりやすくかなりシンプルなものにしましたが、実際には、

  • どこまで書けば7割なのか?
  • 500万円未満の軽微な工事が多数あるときはどうすればよいのか?
  • 契約書や注文書・請書などの書類で実績を証明できるか?

といった観点から、かなり詳細に精査をしなければなりません。

初めて経審を受けるかたにとっては、とても難しい作業であることに間違いありません。

本件の事案について

本件の事案についても、前任の行政書士の先生が作成した工事経歴書が、経審用のルールで作成されたものではなかったので、弊所で、経審用のルールに則って作成しなおし、経審に臨みました。

ただし、こういった作業は誰にでもできるわけではありません。文章を読んで理解するのと、実際に書類を作って経審を受けるのとでは、まったく違います。やはり、経営事項審査に関しては、申請手続きに慣れたプロに書類の作成をお願いすることをお勧めいたします。

前任者の作成した書類を修正し、無事、経営事項審査を終了

以上、見てきたように、この事案では、前任の行政書士の先生が作成した決算変更届のうち、

  • 財務諸表及び工事経歴書などを税抜き表記に書き換える
  • 工事経歴書の記載を経審用のルールに書き換える

という2つの点について、弊所で修正をしたうえで、経営事項審査を無事完了することができました。

経営事項審査の際には、上記2点のみでなく、

  • 建退協の加入履行証明書
  • 法定外労災の加入証明書
  • 工事経歴書上位5件の実績を証明する資料
  • 健康保険、厚生年金保険、雇用保険の領収書

など、実にさまざまな書類が必要になります。本件では特に問題になりませんでしたが、初めて経審を受ける方は、手引きに記載のある「必要書類一覧」をよく確認のうえ、不足がないように準備しなければなりません。

経営事項審査に関する独特なルールの理解を!

さて、前任者の行政書士さんが作成した書類を訂正し、経営事項審査を無事完了させた事例について、如何でしたでしょうか?

実は、経審を受ける際に、前任者が作成した書類を訂正しなければならないケースは、結構、頻繁にあります。

一番多いのは、土建組合が、決算変更届の提出をしているケースです。土建組合が、経審のルールを熟知したうえで、決算変更届を作成・提出しているとよいのですが、そういったケースはほとんどありません。

続いて多いのは、会社の担当者さんが、決算変更届を提出しているケースです。決算変更届を提出するだけなら、とくに細かいことは言われず受付してくれることから、決算変更届を行政書士に外注するのではなく、社内で処理している会社も多いのではないかと思います。そういった場合には、社内で処理している決算変更届を経審用に書き直さなければならないケースが多いです。

最後に多いのが、本件のように、行政書士(または税理士)が決算変更届を提出しているケースです。

これは、何も「決算変更届を提出している行政書士(税理士)が悪い」と言っているわけではありません。本文の中でも、前任者の行政書士さんが作成した書類のミスを指摘する形になりましたが、

  • 前任の行政書士の能力がない
  • 前任の行政書士の勉強不足

ということを言いたいわけではありません。

経営事項審査に関しては、それだけ、専門的な手続きの理解が必要で、通常の書類の作成の仕方とは異なるルールが適用されるため、きちんとした知識と経験が必要なのです。

たとえば、会社の「総務」や「経理」のご担当者さまは、「総務」や「経理」についての専門的知識はあったとしも、「経審の手続きの流れ」「経審の仕組み」「経審の書類の作成の仕方」について、専門的知識がないのは仕方ありませんね。

行政書士も同様に、経審の手続きを専門にやっていない方であれば、多少のミスや間違いは仕方ないのかもしれません(ただし、お客様に不利益を与えるようなミスは許されません)。

行政書士法人スマートサイドでは、この事案のように、前任の行政書士の先生が作成した書類のリカバリーを行うことも可能です。

行政書士や税理士の先生方から、建設業者さまをご紹介いただくこともあるくらいですから、はじめて経審を受ける建設業者さまはもちろんのこと、

  • 経審をお任せしたい
  • 入札に興味があるクライアントをご紹介したい

といった行政書士、税理士の先生からのお問合せも受け付けております。

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