1級土木施工管理技士の国家資格を持っていたとしても、平成27年度までの合格者については、1年以上の実務経験を証明するか、もしくは、登録解体工事講習を受講しないと、解体工事業の専任技術者になることができません。平成27年度までの合格者か、平成28年度以降の合格者かによって、取扱いが大きく異なります。
資格の種類 | 合格年 |
実務経験・講習受講の要否 |
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1級土木施工管理技士 | 平成27年度までの合格者 | 1年以上の実務経験もしくは登録解体工事講習の受講が必要 |
平成28年度以降の合格者 | 実務経験や講習の受講は不要 |
本件では、平成27年度までの1級土木施工管理技士の合格資格を使って、解体工事業の許可を取得した経緯、対応などについて解説させて頂きます。
相談内容:解体工事の建設業許可を追加で取得できるか?
概要
会社所在地 | 東京都豊島区 |
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業種 | 電気・とび・塗装・鋼構造物 |
相談内容
相談内容 | おもに鉄塔の解体を行っている。すでに許可を持っている「電気工事」「とび工事」の範疇に収まると思っていたが、元請から、解体工事業の許可を取得するように催促されている。
1級の国家資格者はいるが、解体工事の許可を取得できるかわからない。 |
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申請内容
申請内容 | ・建設業許可業種追加申請(解体工事業) |
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行政書士法人スマートサイドの対応
「解体工事の建設業許可を業種追加したい」という事業者さまからのお問い合わせでした。下請工事会社として、おもに鉄塔の解体を行っているということでした。すでに「電気工事の許可」「とび工事の許可」を持っていたので、今までは特に「解体工事業の許可」について指摘されることはなかったが、今回元請より「解体工事業の許可」を取得するように催促されているとの事でした。
1級土木施工管理技士の資格者が複数名在籍しているということでしたので、許可取得の可能性はあると判断し、受任する運びとなりました。
1級土木の資格で解体工事の許可を取得するための2つのポイント
(1)1級土木施工管理技士の合格は平成27年度以前か?
解体工事業の許可を取得する場合、もっとも重要なのは、どのような資格を持っている社員が在籍しているか?の確認です。本件では、1級土木施工管理技士の資格をお持ちとの事でした。しかし、1級の国家資格を持っているからと言って安心してはいけません。
1級の国家資格を持っていたとしても、平成27年度以前の合格者については
- 解体工事の実務経験1年以上の証明
- 登録解体工事講習の受講
が求められます。
仮に上記の2点を満たさなかったとしても、解体工事業の許可を取得することは可能ですが、その場合には、
- 2021年3月31日までに、解体工事の実務経験1年以上の証明または登録解体工事講習の受講をして、要件に合致した専任技術者への変更
が必要になります(※上記2021年3月31日までの経過措置は終了しました)。
(2)解体工事の実務経験の証明はできるか?
「登録解体工事講習の受講が面倒だから、1年間の実務経験を証明することによって、解体工事の許可を取得したい」と考える方もいるでしょう。しかし、そもそも解体工事の実務経験の証明ができるか?という点に立ち返って、考えなければいけません。
解体工事を行うには、500万円以上の金額であるか否かを問わず、建設リサイクル法に定める「解体工事業者の登録」をしていなければなりません。解体工事業の登録をしていないのに解体工事を行うことは法令違反になります。法令違反に該当する解体工事は、実務経験として認定されません。
御社が解体工事業の登録を行っている解体工事業者であれば、過去の解体工事の実績を建設業許可を取得する際の実務経験として提出できます。しかし、一方で、御社が解体工事業の登録をしていなければ、どんなに解体工事をやっていたといっても、その実績を実務経験として使用することはできないわけです。
解体工事業の登録 | 実務経験の証明 | |
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解体工事業の登録なし | 解体工事の実務経験を証明することは不可 | |
解体工事業の登録あり | 解体工事の実務経験を証明することは可 |
(3)本件では、登録解体工事講習を受講して頂きました
本件の事業者さまは、解体工事の登録をしていない事業者様であったため、「解体工事の実務経験1年以上の証明」をすることができませんでした。そのため、1級土木施工管理技士の方に、登録解体工事講習を受講して頂くことになりました。
なお、登録解体工事講習の実施機関は、以下の通りです。
名称 | 所在地 | |
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全国解体工事業団体連合会 | 〒104-0032 東京都中央区八丁堀4-1-3 |
以前までは、「全国建設研修センター」でも、登録解体工事講習を実施していましたが、令和3年9月で終了となっています。講習の実施機関・概要・スケジュールについては、最新の情報を確認するようにしてください。
(4)無事、解体工事業の建設業許可を業種追加することに成功
ご相談を頂いてから、登録解体工事講習の受講まで、3ケ月程度かかりました。登録解体工事講習の受講も「いつでも・簡単に」できるわけではなく、空きがなければ、順番待ちやキャンセル待ちをしなければならないようです。
お客様から登録解体工事講習の受講証を頂き、都庁に申請し、無事、解体工事の業種追加をすることが出来ました。
解体工事の建設業許可を取得したいとお考えの方へ
内装工事、とび・土工・コンクリート工事、管工事、塗装工事などと異なり、解体工事の過去の工事実績を証明するには、解体工事業の登録をしている必要があります。理由は、上記にも記載したとおり、法律上、解体工事業の登録をしていなければ、解体工事はできない建前になっているからです。
事業者さまの中にも、このあたりの認識が乏しい方がいらっしゃるので注意が必要です。
本事案では、一級土木施工管理技士の資格者がいたからよかったですが、仮にいなかったらどうすべきだったでしょうか?仮に一級土木施工管理技士が在籍していなかったとしても
- 建設機械施工技士
- 2級土木施工管理技士
- 建築施工管理技士
- 解体工事士
- 地すべり防止工事士
- ウェルポイント施工(技能検定)
- 型枠施工(技能検定)
- とび・土工(技能検定)
- コンクリート圧送施工(技能検定)
の資格者がいれば、解体工事の許可を取得できる可能性はあります。もっともその場合には、
- 実務経験の証明が必要なのか
- 登録解体工事講習の受講が必要なのか
などの諸々の条件について、詳しく見ていかなければなりません。弊所では、「解体工事士」の資格を使って、解体工事の新規許可を取得した実績もありますので、詳しくはこちらをご覧ください。
(なお、平成28年6月に解体工事業の建設業許可が新設されたことに伴う経過措置は終了していますので、ご注意ください)
解体工事業の建設業許可を取得したい方や、解体工事業の建設業許可を取得できずに困っている方は、ぜひ、下記問い合わせフォームから、行政書士法人スマートサイドまでご連絡ください。