新規会社設立後の建設業許可取得方法ー 1級防水施工技能士の資格を活かした成功事例

このページは、


法人設立後10か月しかたっていない建設業者さまからのご依頼で、「個人事業主時代の経験」と「法人設立後の代表者としての経験」を利用して、経営業務管理責任者の要件を証明し、建設業許可取得に成功した事例を解説したものです。

建設会社を設立したは良いものの、建設業許可を取得できずに困っているという人がいれば、参考にしていただければ幸いです。


会社設立後すぐに、「建設業許可を取得したい」という方は、大変多くいらっしゃいます。その際に、どうしても必要になるのが、個人事業主としての経験です。

「法人成り後(会社設立後)5年以上、経過している」というのであれば良いのですが、

  • 会社設立してから3年しか経っていない
  • 昨年会社を設立したばかり

という場合、ほかに法人の役員としての経験がなければ、どうしても、個人事業主としての経験を用いるしかありません。

このページでご紹介する事例は、法人成り(会社設立)してから10か月しか経っていませんでしたが、個人事業主時代の経営経験をうまく利用して、建設業許可(防水工事業の許可)を取得できた事例です。

「法人の役員としての期間」と「個人事業主としての期間」の2つの期間を、「どのように使用して、経営業務管理責任者の要件を証明し、建設業許可を取得するに至ったのか?」を以下、わかりやすく解説させて頂きます。

相談:法人設立後10か月。建設業許可を取得できますか?

概要

会社所在地 東京都荒川区
業種 防水工事業

相談内容

相談内容 以前から防水工事業の許可取得を検討していたが、なかなか手が付けられずにいた。個人事業主から法人成りし、だいぶ落ち着いてきたので、これを機に、本腰を入れて建設業許可取得の準備をしたい。

申請内容

申請内容
  • 東京都建設業許可取得(防水工事業)

行政書士法人スマートサイドの対応

税理士の先生からのご紹介案件でした。お客様と税理士の先生とのお付き合いが長く、建設業許可に必要な書類も税理士さんのほうで保管しているものが多かったので、弊所としても助かりました。

法人成り(会社設立)してから10か月とのことですので、経営業務管理責任者の要件を満たすためには、個人事業主時代の経営経験が必要になってきます。専任技術者の要件としては、1級防水施工技能士の資格を持っているので、特に問題はありません。

個人事業主時代の経営経験を証明するための書類は、確定申告書の第1表と第2表の原本ですが、確定申告書類もすべて保管してあるとのことでしたので、許可を取得できる見込みがあると判断し、受任する運びとなりました。

以下では、この案件を処理するにあたって、私の頭の中の思考回路を順番に文章にしてみました。どういった思考回路で証明する順番を考えていけば、許可が取れるのか?ぜひ、参考にしてみてください。

個人事業主+法人役員の経験で「経営業務管理責任者」に!

(1)法人の役員としての期間の証明

まず、このお客様の場合、令和1年6月に会社を設立されて、代表取締役に就任し、10か月以上たっているので、登記簿謄本から、10か月間は、法人役員としての期間を証明できます。

ただし、10か月間だけでは、経営業務管理責任者の要件を満たすことはできません。個人事業主時代の経営期間を遡って証明する必要があります。

法人役員の経験の証明 履歴事項全部証明書

(2)個人事業主としての期間の証明

個人事業主時代の経営期間を証明する資料は、確定申告書です。この確定申告をきちっと行っていない個人の方は多いのですが、このお客様の場合、確定申告を行いかつ当時の資料を、しっかりと保管していました。

  1. H26年分
  2. H27年分
  3. H28年分
  4. H29年分
  5. H30年分

の確定申告書を提出していただきました。

個人事業主の経験の証明 確定申告書

(3)法人役員と個人事業主としての期間の合算

上記のように履歴事項全部証明書(1)によって、法人の取締役としての経験(10か月)を証明し、個人事業主時代の確定申告書(2)によって、個人事業主としての経験(5年)を証明します。

そうすることによって、経営業務管理責任者の要件である5年以上の期間を証明することが可能になります。

経験 期間 年数
(1)法人役員 令和1年6月~令和2年3月 10か月
(2)個人事業主 平成26年1月~平成30年12月 5年
(1)と(2)の期間の合計 5年10か月

(4)防水工事の経験の証明

上記(1)(2)(3)で、法人役員・個人事業主としての「期間の証明」をすることができたので、続いて、その期間、実際に防水工事業をしていた(いる)こと、すなわち「経験の証明」をしなければいけません。

本件では、H26年1月~H30年12月の間、および、R1年6月~R2年3月の間における防水工事の経験の証明が必要になります。

この経営の経験は、業務内容が明確にわかる

  1. 工事請負契約書
  2. 工事請書
  3. 注文書
  4. 請求書+入金通帳

の4点で行います。もっとも、1~3を保管している会社は多くないため、通常「4.請求書+入金通帳」で行います。

これを本案件について具体的に当てはめると、

  • 個人事業主時代に施工したH26年1月~H30年12月の防水工事の請求書とそれに対する入金通帳
  • 会社設立後に施工したR1年6月~R2年3月の防水工事の請求書とそれに対する入金通帳

​を1件ずつ確認していくことになります。

あくまでも防水工事の建設業許可を取得するための資料ですので、仮に内装工事や外壁塗装工事、物品の販売などを行っていたとしても、それらの「請求書+入金部分」は、「経験」にはカウントされません。

東京都の場合は、月1件程度の割合で「請求書+入金通帳」が必要になるため、本件でも5年10か月分=70か月分=70枚の請求書+入金通帳を用意したことになります(なお、現在では、運用が変わり3か月1件の「請求書+入金通帳」の準備でよくなりました)。

実際に準備した請求書の枚数を「(1)法人成りしてからの分」と「(2)個人事業主時代の分」とに分けて表にしてみると以下のようになります。

個人or法人 期間 請求書
入金記録
(1)法人成り後 令和1年6月~令和2年3月 10件
(2)個人事業主時代 平成26年1月~平成30年12月 60件
(1)と(2)の請求書・入金記録の合計件数 70件

以上のような過程を経て、建設業許可を取得する際に必要な経営業務管理責任者の要件を証明することに成功しました。

建設業許可取得に必要な「その他」の要件

専任技術者の要件について

専任技術者の要件については、社長が1級防水施工技能士の資格を持っていたので、とくに問題はありませんでした。

1級防水施工技能士の資格があれば、建設業許可取得に必要な専任技術者の要件を満たすからです。

営業所の要件について

このお客様の場合、個人宅を会社用の事務所としても使用していました。

このように自宅兼事務所で、建設業許可を取得する場合、「建設業の営業所部分」と「自宅として利用する部分」は、明確に分かれていなければなりません。東京都の場合は、ほかの県よりも、この部分を厳しく見る傾向があるように感じます。

本件では、1階部分を車庫件事務所として使用し、自宅部分は2.3階にあり、両方が独立分離されていたため、特に問題はありませんでした。

個人からの法人成り後、すぐに建設業許可を取得したい人へ

今回のケースでは、

  • 確定申告書で個人事業主時代の期間の証明ができたこと
  • その間の「請求書+入金通帳」も残っていたこと

がとても大きかったです。これが、もし仮に

  • 個人事業主時代に確定申告をしていませんでした
  • 確定申告をしていたのですが、書類が見当たらない

というふうになると、もっと手続きの難易度が上がり、許可取得が難しくなっていたかもしれません。


このページで紹介したように、建設会社は設立したものの、建設業許可を取得する方法が分からずに困ってしまっている人は多いように思います。せっかく建設会社を設立したのに、建設業許可を取得できないのでは、個人から法人になった意味がありません。

法人設立後、すぐにでも建設業許可を取得できなければ、仮に法人になったとしても500万円以上の工事を受注することができないわけですから、法人成りと建設業許可取得はセットで考えたほうがよいでしょう。

「建設会社を設立したものの、建設業許可の取得方法が分からない」「そろそろ個人事業主から法人成りしようと考えている」という方がいれば、ぜひ、下記問い合わせフォームから行政書士法人スマートサイドまでご連絡下さい。

御社に代わって建設業許可取得に関する一切の手続きを代行させて頂きます。

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