建設業許可の新規申請成功事例:他社での取締役経験を活かし経管要件を証明した方法を学ぶ


このページは、行政書士法人スマートサイドが、実際にお客さまからご依頼を受けて、建設業許可取得に成功した事例のうち、「他社での取締役の経験」を活用して、経営業務管理責任者の要件の証明に成功した方法をわかりやすく解説したページです。


建設業許可を取得するために必要な要件のうち、一番重要なのが、経営業務管理責任者の要件です。(なお、令和2年10月の改正により、経営業務管理責任者は「常勤役員等」という名称に変更されましたが、実務上は、「経営業務管理責任者(経管)」と呼ぶことが多いので、このページでも「経営業務管理責任者(経管)」という表記で統一します)。

この要件を満たすことの重要性は、「東京都知事許可」であろうが、「埼玉県知事許可」であろうが、「神奈川県知事許可」であろうが、「千葉県知事許可」であろうが、変わりありません。

経営業務管理責任者の要件を「ビシッ!」と証明できれば、建設業許可取得のハードルは一気に下がりますが、経営業務管理責任者の要件を証明に難があると、どこの知事許可であろうと、許可取得は難しいものとなります。

今回の事案は、新規の建設業許可を無事に取得することができた事案です。他社での取締役経験があり、しかも、その会社が建設業許可を取得している会社であったため、すんなりと許可を取得することが出来ました。

これから新たに建設業許可取得を検討されている方は、ぜひ、参考にしてみてください。

経営業務管理責任者 他社での取締役経験(5年以上)あり
その会社が建設業許可を取得している会社

相談内容:建設業許可を新規で、できるだけ早く取得したい

概要

会社所在地 埼玉県さいたま市
業種 建築一式・土木一式・内装・造園

相談内容

相談内容 新たに建設業許可を新規で取得したい。他社での取締役経験があるので、経営業務管理責任者の要件は満たしているのではないかと思う。

また、国家資格を保有しているので、技術者要件については、問題がないと思う。

申請内容

申請内容
  • 建設業許可新規申請

行政書士法人スマートサイドの対応

すでにお付き合いのある建設業者さまからのご紹介案件で、「埼玉県さいたま市の建設業者さま」からのご依頼でした。

初回の面談・ヒアリングをおこなったところ、

経営業務管理責任者の要件については、

  • 他社での取締役経験があること
  • その会社が建設業許可業者であること

から、経営業務管理責任者の要件を満たすと判断しました。

また、専任技術者の要件については、社長ご自身が

  • 1級建築施工管理技士
  • 1級土木施工管理技士
  • 1級造園施工管理技士

の3つの資格を保有しており、こちらも問題ないと判断しました。

経営業務管理責任者の要件も、専任技術者の要件も、いずれも充足していると判断できたため、弊所で受任する運びとなりました。

他社での取締役の経験を活かして建設業許可を取るには?

上記のように、初回打ち合わせやヒアリングでは、経営業務管理責任者の要件も、専任技術者の要件も、いずれも充足していると思われたとしても、許可を取得するには、要件を1つずつ証明して行かなければなりません。

初回面談時点で社長が、「国家資格を保有しているので、技術者要件については、問題がないと思う。」とおっしゃっていたので、安心しきっていましたが、想定外のこともありました。

以下では、経営業務管理責任者の要件を中心に、経管要件を証明するための手段を順番に沿って記載していきたいと思います。

経営業務管理責任者の要件

(1)取締役の経験が5年以上あることの証明

建設業許可を取得するには、建設業許可を取得する会社の常勤取締役の中に「経営業務管理責任者」が必要です。この経営業務管理責任者になるには、

  1. 建設会社の取締役としての5年以上の経験
  2. 建設業の個人事業主としての5年以上の経験

が必須です。この事案では、個人事業主としての経験はなかったため、「1.建設会社の取締役としての5年以上の経験」を証明することになります。そして、会社の取締役としての経験は、法務局で取得する登記簿謄本によって証明します。登記簿謄本は、法務局で誰でも取得することができます。

現在の会社の状態を証明する履歴事項全部証明書で、5年以上の取締役としての経験を証明できれば問題ありませんが、過去にさかのぼることが必要な場合には、履歴事項全部証明書だけでなく、閉鎖事項全部証明書が必要になる場合もあります。

取締役の経験が5年以上あることの証明 履歴事項全部証明書
閉鎖事項全部証明書

本事案のケースでは、平成15年9月~平成30年3月までの間、取締役に就任していたことが、履歴事項全部証明書で確認できたため、閉鎖事項全部証明書まで取得する必要はありませんでした。

(2)その会社が建設業許可業者であったことの証明

経営業務管理責任者の要件を満たすためには、建設会社の取締役としての5年以上の経験を証明すればよいだけではありません。

その取締役に就任していた期間、建設業を行っていたこと(工事をおこなっていたこと)の証明も必要になります。(1)が「取締役としての地位の証明」であったのに対して、(2)は「工事実績もしくは経営実績の証明」といっても良いかもしれません。

本事案のケースでは、取締役として就任していた会社が建設業許可業者であったため、

  • 許可通知書を出してもらったり
  • 建設業許可申請書や変更届の副本を出してもらったり
  • 埼玉県庁に許可期間の照会をかけたり

して、実際の許可状況を確認しました。

その会社が建設業許可業者であったことの証明 建設業許可通知書
建設業許可申請書や変更届の副本

そうしたところ、この会社は、平成16年4月から、内装工事業の建設業許可(埼玉県知事許可)を取得していることの確認が取れました。これにより、この会社には、平成16年4月から内装工事の実績があったことになります。

(3)経営業務管理責任者の要件充足の有無

上記の(1)(2)から判断すると

取締役の経験が5年以上あることの証明は、履歴事項全部証明書からすることができ、実際に「平成15年9月~平成30年3月まで」の間、取締役に就任したいたことが証明できます。

次に、その会社が建設業許可業者であったことの証明は、建設業許可通知書からすることができ、実際に「平成16年4月~現在に至るまで」の間、建設業許可を持っていることが証明できます。

そうすると、すくなくとも、

  • 建設業許可取得時である平成16年4月から
  • 取締役を退任した平成30年3月まで

の間の、「(1)取締役としての地位」および「(2)工事実績・経営実績」の2つが証明できたことになります。これにより、本事案のケースでは、経営業務管理責任者の要件を証明することが可能となりました。

(1)取締役としての地位 平成15年9月~平成30年3月まで
(2)工事・経営実績 平成16年4月~平成30年3月まで

以上(1)(2)により、経営業務管理責任者の要件を満たすと判断

専任技術者の要件の証明

技術検定合格証明書の原本

専任技術者の要件を証明するには、1級技術検定合格証明書の原本を提示することになります。仮に、国家資格を保有していなければ、「契約書」「注文書と請書」「請求書と入金通帳」などによって、実務経験を証明しなければなりません。

合格証明書を紛失した場合は?

私としては、社長から「国家資格を保有しているので、技術者要件については、問題がないと思う」と聞いていたため、まさか、合格証を紛失しているとは思ってもみませんでしてた。そのため、​本事案で、唯一、想定外であったのは、社長が、合格書の原本を紛失してしまっていたことでした。

社長としては、「合格している事実は、合格証のコピーで証明できるはず。合格証のコピーならあるので、それで建設業許可取得ができるはず。」と思っていたようです。

しかし、建設業許可を取得する際には、資格合格書のコピーではなく、原本の提示が必ず必要になります。「埼玉県庁に合格証のコピーではだめですか?」と確認したところ、「原本の提示が必要です」と言われました。

ですが、慌てる必要はありません。合格証は再発行してもらうことが可能です。

本事案の場合も、1ケ月程度かかりましたが、関東地方整備局にて、合格証の再発行をしてもらうことが出来ました。但し、合格証の再発行は、あまり良いことではありません。合格証は、個人の資格に関するものなので、会社や行政書士が代理で再発行手続きを行うことはできません。必ず、本人が再発行申請を行わなければなりません。

さらに、再発行申請をしたからと言って、その場で再発行してもらえるわけでもありません。再発行までに1ケ月程度かかると、申請も1ケ月遅れてしまうことになります。

国家資格の合格証や免許証は、なくさないように、自宅金庫に保管するなどして管理してください。

無事、建設業許可の新規取得

申請日当日は、埼玉県庁まで書類を持参しました。金曜日だったせいもあって、午前中に申請に行ったのですが、待ち時間が1時間以上、審査に1時間程度かかるなど、思った以上に時間がかかりました。

資格合格証の再発行といった予期せぬ事態はありましたが、

  • 1級土木施工管理技士
  • 1級建築施工管理技士
  • 1級造園施工管理技士

の資格を使って、

  1. 建築一式工事
  2. 土木一式工事
  3. 内装工事
  4. 造園工事

の許可を無事取得することが出来ました。

他社での取締役経験を使って、建設業許可を取得したい人へ

本事案のように、「他の会社での取締役としての経験が5年以上あり」「その会社が、建設業の許可を持っていた」ようなケースでは、比較的建設業許可を取得しやすいように思います。

もっとも、「他の会社での取締役としての経験が5年以上あることの証明の仕方」や、「その会社が、建設業の許可を持っていたことの確認・証明の仕方」は、誰でもわかるわけではありません。

どんなに「経営業務管理責任者の要件を満たしています!」と主張したとしても、それを証明する裏付資料がなければ、当然のことながら、建設業許可を取得することはできません。

また、本事案では、「(他社=)その会社が、建設業の許可を持っていた」ケースでしたが、仮に建設業許可を持っていなかった場合、工事の実績を証明するために、別途「工事請負契約書」「注文書・請書」「入金通帳・請求書」のような資料も必要になります。

他社が建設業許可を持っているケースと、持っていないケースで、経管要件を証明するための資料も異なってくるのです。

5年の経験を証明するために必要な書類
他社に建設業許可あり 許可通知書/申請書/変更届など
他社に建設業許可なし 工事請負契約書/注文書/請求書など

このように、ひとことで「他社での取締役経験を活かす」といっても、状況に応じて、さまざまな証明資料を提示しなければ建設業許可を取得することができません。

もし、みなさんの中で「他社での取締役経験が5年以上ある」という人は、ぜひ、行政書士法人スマートサイドまでご連絡をください。許可取得に必要な経営業務管理責任者の要件が揃っているかの判断をさせて頂きます。

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