建設業許可の更新手続きを忘れる人は、さすがに、いないと思います。一度取得した建設業許可を維持するには、5年に1度の更新申請が必要です。
ですが、5年に1度の更新の前にやっておかなければならないことは多々あります。有名なところでいうと、事業年度終了後4か月以内の決算変更届、本店所在地が変わったのであれば本店所在地の変更届、取締役が変わったのであれば取締役変更届の提出が必要です。
意外と知られていないのが、株主の変更があった場合には、株主の変更届を提出する必要があるといった点です。
株主の変更は、そう頻繁におこるわけではないので、情報も少なく、どうやったらよいのか分からず、放置しているケースも少なくありません。このページでは、弊所で実際に受任した「建設業許可の更新申請」とともに「株主2名の変更」を行ったケースについて、解説させて頂きます。
「株主を変更した」「株主の変更を予定している」「株主の持ち株割合を変更する」といった方は、ぜひ、参考にしてみてください。
相談:建設業許可の更新の前に株主の変更は必要か?
概要
会社所在地 | 東京都豊島区 |
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業種 | 電気・とび・塗装・鋼構造物工事 |
相談内容
相談内容 | 建設業許可の更新期限が近づいているので、更新をお願いしたい。また、年末に株主の変更があったので、株主の変更手続きも併せてお願いしたい。 |
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申請内容
申請内容 |
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行政書士法人スマートサイドの対応
以前からお付き合いのある事業者さまからのご依頼でした。建設業許可の更新時期については、弊所でも把握しておりましたので、更新期限に間に合うように、余裕を持って準備を開始するようにしました。
ヒアリングを行ったところ、年末に株主2名に変更があったとの事でしたので、「株主の変更届が必要性」「株主の変更の際には、どのような書類を都庁に提出すべきか?」について説明を行いました。
また、この事業者さまは、取締役が5名、専任技術者が3名います。一般的な会社だと、取締役は多くて1~3名程度、専任技術者も1、2名といったところなのですが、「取締役の人数が5名」「専任技術者の人数が3名」というのは、比較的規模の大きい会社であるといえます。
そのため、必要書類の収集に時間がかかると思ったので、できるだけ、早めに作業を開始するといったことで、弊所で受任させて頂くことになりました。
建設業更新申請+株主変更届:確認の手順と必要書類
以下では、「建設業許可の更新の準備」とともに、「建設業許可業者における株主変更の際の注意点」および「必要になる書類」などについて、このお客さまのケースをもとに実践的に解説していきます。
1.決算変更届に提出漏れがないかの確認
決算変更届(事業年度終了届)については、このページ以外でも記載していますが、建設業許可更新申請を滞りなく終わらせるためには、何よりもまず、「決算変更届(事業年度終了届)が、漏れなく提出できているか?」を確認しなければなりません。
建設業許可の更新時期が間近に迫っているからと言って、決算変更届の提出を後回しにすることはできません。決算変更届は、事業年度終了後4か月以内に許可行政庁に提出することが、法律上、定められています。
更新申請の際には、過去分の決算変更届が漏れなく提出されているか、チェックを受けますので、必ず、漏れなく、不備なく提出するようにしてください。
この事業者様の場合、決算変更届は、毎年弊所にて対応させて頂いているので、決算変更届の提出が漏れているということはありませんでした。
2.その他の変更届の提出
決算変更届の提出漏れのほかに、建設業許可の更新申請の際に、よくある変更届の提出漏れは以下の通りです。
- 取締役の変更届が出ていない
- 本店所在地の変更届が出ていない
- 資本金の変更届が出ていない
なぜ、「取締役」「本店所在地」「資本金」の変更をしていないと、バレてしまうのでしょうか?自分から言わなければ、都庁や県庁は分からないのではないか?と思いませんでしたか?
答えは、「取締役」「本店所在地」「資本金」は、いずれも、登記簿謄本に記載されている事項だからです。建設業許可更新の際は、会社の登記簿謄本も添付することになっています(発行後3ケ月以内の原本)。「取締役」「本店所在地」「資本金」の変更は、登記簿謄本を見ることによって、すぐに確認することができます。
「自分から言わなければ、変更したことが分からない」というわけではありませんので、変更届を提出しないわけにはいかないのです。
本件では、「取締役」「本店所在地」「資本金」について、特に変更はありませんでした。
3.建設業許可における「株主の変更」の注意点
建設業許可申請書類の中には、株主の氏名や生年月日を記載する箇所があります。「そんなの知らない」といっても、建設業許可を新規で申請する際に、ちゃんと出しているはずです。具体的には以下のような書類が挙げられます。
- 別紙一 役員等の一覧表
- 許可申請者の住所、生年月日等に関する調書(様式第十二号)
- 株主調書(様式第十四号)
- 役員等氏名一覧表
上記の書類に記載が必要な株主は、
- 議決権の100分の5以上を有する株主
です。議決権の100分の5未満の株主は、記載する必要がありません。
議決権の100分の5以上を有する株主の情報については、新規許可取得時点で、都庁や県庁に申請書類に記載して提出しているわけですから、変更があった場合には、変更届を提出しなければなりません。
変更届を提出する際に必要な書類は、
- 上記の4点のほか
- 変更届出書(第一面)
- 誓約書
です。
4.株主についての届出が必要な理由
このホームページをご覧頂いている方の中には、代表取締役でも取締役でもない、株主が、なぜ、届出を提出する必要があるのか?いまいち、よくわからないといった人も多いかと思います。
株主の届出が必要なのは、あくまでも、
- 議決権の100分の5以上を有する株主
についてです。大事なのは、「株主」の部分ではなく、「議決権の100分の5以上を有する」といった部分です。代表取締役や取締役について、「別紙一 役員等の一覧表」「許可申請者の住所、生年月日等に関する調書(様式第十二号)」が必要なのは、ご理解いただけると思います。会社経営の意思決定を行うのが取締役ですから、その取締役について住所や氏名、生年月日について嘘偽りがないか否かの確認が必要です。
では、株主の場合はどうでしょう?
株主の場合も、議決権の100分の5以上を有する場合、仮に取締役でなかったとしても、会社の意思決定に大きな影響力を与えるといえそうですね。
仮に取締役でなかったとしても、その株主が
- 過去に虚偽申請を行っていた
- 暴力事件を起こして逮捕されていた
- 建設業許可取消し処分を受けていた
といった場合、そのような人物が、議決権の100分の5以上の株式を有する会社に建設業許可を取得させるのは、好ましくありません。そのため、議決権の100分の5以上の株式を有する株主については届出が必要になってくるのです。
本事案では、議決権の100分の5以上の株式を有する株主の中に、「新たに株主に就任した方1名」と、「結婚により苗字が変わった方1名」がいらっしゃいました。そのため、建設業許可更新申請を行う前に、変更届(第一面)を筆頭に、株主の変更届に関する書類の提出が必要だったわけです。
なお、株主の構成については、税理士さんが作成する決算報告書の中に、記載がありますので、気になる方は1度、決算報告書を確認してみるとよいでしょう。
5.取締役5名+専任技術者3名の必要な書類
建設業許可を更新する際には、さまざまな書類を準備する必要があります。健康保険・年金保険・雇用保険の加入を証明する書類や登記簿謄本などが挙げられます。しかし、それらは、いずれも、会社(法人)に属する書類です。そのため、取得はそれほど難しいものではありません。
問題は、会社(法人)に属する書類ではなく、取締役、経管、専技などの役所から取り寄せる必要のある個人に関する法定書類についてです。
建設業許可を更新する際に、個人に関する必要書類は以下の通りです。
(1)取締役
- 身分証明書
- 登記されていないことの証明書
(2)経管・専技
- 住民票
※なお現時点では、住民票は必要とされておりません。申請の際には、手引きなどを確認し、最新の情報を確認するようにしてください※
(3)このケースでは…
本案件では、
- 取締役5名分の身分証明書
- 取締役5名分の登記されていないことの証明書
- 経管1名分の住民票
- 専技3名分(内1名は経管を兼任)の住民票
合計で13通もの法定書類を、委任状を使って、お客様に代わって、弊所でお取り寄せいたしました。なお、株主については、変更届などの届出は必要であるものの、住民票・身分証明書・登記されていないことの証明書の提出は必要ありません。
6.無事、建設業許可更新完了
本事案のお客様の更新受付期間は、1月末から2月末の間でしたが、2月の上旬に無事、建設業許可更新申請を完了することが出来ました。
建設業更新申請に伴う変更届の提出でお困りの人へ
このページでは、建設業許可更新についてではなく、株主の変更届について重点を置いて記載しましたが、如何でしたでしょうか?
弊所では、「建設業許可更新の期限に間に合いそうにない」といったお問い合わせを受けることがよくあります。本文にも記載しましたが、注意すべきは、
- 事業年度終了後4か月以内の決算変更届の提出
- 取締役の変更届の提出
- 本店所在地の変更届の提出
- 資本金の変更届の提出
の4点ですが、本事案のように、株主の変更届の提出が必要になる場合もあります。
社長1人、従業員数名といった小規模会社の場合、株主が社長1人(100%)であることが少なくありません。そういった会社は、株主の構成について、そこまで気にする必要はないかもしれません。
しかし、本事案の会社のように取締役5名、専技3名といった大きな会社の場合、株主が身内だけとは限りません。
会社設立当初は株主になってもらったものの、その後疎遠になり、株主から抜けていたといったこともあるかもしれません。そのような場合には、議決権の100分の5以上の株主に該当するか否かを確認し、株主の変更届の提出が必要になることを思い出してください。
また、取締役や専任技術者が多数いる場合に、人数分の・身分証明書・登記されていないことの証明書・住民票を取得するのは、容易な事ではありません。法定書類の取得に時間がかかってしまうと、それだけ、建設業許可の更新申請が難しくなります。
株主の変更が必要な場合、本店所在地や資本金の変更があった場合、取締役・専任技術者が多数いるような場合の建設業許可更新申請でお困りの方は、ぜひ、下記問い合わせフォームから、行政書士法人スマートサイドまで、ご連絡ください。
皆様からのご連絡をお待ちしております。