建設業許可に関する「申請」や「届出」を、税理士の先生にお願いしている人もいらっしゃるかと思います。
税理士の先生に依頼をすることが、一概に悪いというわけではないのですが、税理士の専門分野は、税金に関する申告です。建設業許可や建設業の変更届に精通しているか否かという観点から言うと、やはり、知識や経験が欠けている人も少なくありません。税理士としては一流であったとしても、建設業許可に関する難しい申請や複雑な届出について、必ずしも、うまく行くわけではないということを頭の片隅に入れておいた方がよいでしょう。
このページでは、税理士の先生が都庁に申請してうまく行かなかった建設業許可に関する専任技術者の変更届を弊所が申請することによって、無事、完了した事案について解説させて頂きます。
まさかの専任技術者変更届の不受理!
会社の概要
会社所在地 | 東京都台東区 |
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業種 | 東京都知事一般建設業・熱絶縁工事 |
相談内容
相談内容 | 専任技術者の退職に伴い、早急に、専任技術者を変更したい。税理士に都庁に申請に行ってもらったところ、「できません」と言って断られてしまった。何か良い方法はありませんか? |
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申請内容
申請内容 | ・専任技術者の変更 |
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行政書士法人スマートサイドの対応
当初、専任技術者の変更を含め、役員の変更や経営業務管理責任者の変更などいくつかの変更事項を税理士さんにお願いしたそうです。ところが、役員の変更や経営業務管理責任者の変更などはうまく行ったのに、なぜか「専任技術者の変更」だけがうまく行かなかったということでした。
とりあえず、面談をして事情を伺うことにしました。
不受理の原因と解決策の提案
急いでいるとのことだったので、お問合せを頂いた翌営業日に面談を設定いたしました。専任技術者が退職するので急いでいるとのことでしたので、こちらも急いで対応しなければならないと思った次第です。
2時間くらい面談を行ったものの、「税理士さんが都庁の審査担当者にどのようにいわれたのか?」「税理士さんがどのような申請書類・証明書類を都庁に提示したのか?」という点については、明確にはわかりませんでしたが、不受理となった原因が何となくつかめました。
おそらく後任者の10年の実務経験の証明資料が不足していたのではなか?という仮説を立てて、詳しくは、後日、郵送して頂く書類を拝見してから、対策を考えるということで、打ち合わせは終了しました。
不受理となった原因
『なぜ』都庁は、専任技術者の変更を認めてくれなかったのか?理由がどうしても気になります。もし、仮に変更届の提出がうまく行かなければ、新たに専任技術者が見つかるまでの間、建設業許可を取り下げしなければならないからです。この事業者さまの場合、あたらしい専任技術者の候補者は国家資格を持っておらず、かつ指定学科の卒業経歴もなかったため、10年の実務経験を証明するしかありません。
そこで、後日、郵送して頂いた、過去の申請書類をもう1度精査し、不受理となった原因を突き止めました。
専任技術者になるための方法
【方法1】 | 国家資格があること |
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【方法2】 | 指定学科卒業後3~5年の実務経験があること |
【方法3】 | 10年の実務経験があること |
専任技術者になるための方法は上記の1~3があります。国家資格や指定学科の卒業経歴があれば良いのですが、そういった特殊な事情がない場合、10年の実務経験を証明しなければなりません。
確認事項(1)~(4)
やはり、前回都庁に届出を出しに行った際には、10年の実務経験の証明資料が不足していたようです。
この事業者さまは、過去に神奈川県知事許可を持っていました。しかし、その点がすっぽり抜けてしまっていたのです。
そこで、神奈川県知事許可時代の実務経験を使うことはできないかと思い、許可通知書や、決算報告書を確認しました。神奈川県庁にも問合せをし、この事業者さまの許可期間を確認しました。
さらに、新たに専任技術者になる予定の方の、厚生年金被保険者記録照会回答票も確認しました。
確認事項 | 確認内容 |
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確認事項(1) | 神奈川県知事許可時代の許可証の確認 |
確認事項(2) | 神奈川県知事許可時代の届出書や申請書の副本の確認 |
確認事項(3) | 神奈川県庁への問い合わせ |
確認事項(4) | 後任専任技術者の厚生年金被保険者記録回答票の取得 |
解決策のご提案
上記のように(1)~(4)を確認したところ、神奈川県知事許可時代の10年間の実務経験を証明できそうだったので、お客さまに状況を説明。弊所で申請を代行すれば、変更届の提出がうまくいくことをご提案し、了承を得たうえで、申請書類をイチから作成し、再度、東京都庁に申請に行きました。
申請に行ったところ、審査時間はものの15分程度で、あっさりと変更が認められてしまいました。
最初に申請した「税理士さんの申請の仕方」が悪かったのか、それとも「審査を担当した都庁の対応」がたまたま厳しかっただけなのか?
10年の実務経験を証明して専任技術者を変更するには、それなりの準備が必要です。申請に慣れていない人は、どこがポイントなのかを把握せずに書類を作成したり、準備をしたりしてしまうため、都庁に『断る口実』を与えてしまうのかもしれません。
何はともあれ、いったんは断られたものの、専任技術者の変更がうまく行ってご依頼者さまにも喜んでいただき良かったです。自分で建設業許可関連の申請を行おうと考えている税理士さんは、本件のようなリスクがあることに十分注意してください。
専任技術者の変更でお困りの人へ
このように、専任技術者の変更届は、誰が行っても同じ結果になるとは限りません。もちろん、後任者に国家資格があるような場合や、前任者から後任者への変更までに時間があるような場合は、自分の会社で対応できるかもしれませ。
しかし、専任技術者に特有な「指定学科+3~5年の実務経験の証明」「10年の実務経験の証明」を伴う変更となると、ハードルが一気に高まり、知識や経験の乏しい方では太刀打ちできない可能性があります。
行政書士法人スマートサイドは、建設業許可の取得をはじめ、建設業許可を維持するための専任技術者の変更・交替についても、対応することが可能です。専任技術者の変更でお困りの方は、ぜひ、下記、問い合わせフォームからお問い合わせください。