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経営事項審査を受けるには、さまざまな書類を用意しなければなりませんね。手引きを見ると必要書類一覧といったように「どのような書類を準備すればよいのか?」が一覧になって記載されています。
しかし、その一覧を見たからと言って、初めて経営事項審査を受ける方が「これとこれは必要」とか「この書類のうち、この部分が必要」といったように、手際よく必要書類を準備できるかというと、なかなか難しいようです。
私たち専門家でさえ判断に迷うようなこともあるくらいですから、素人の方が、短期間のうちに過不足なく準備するのは、相当、至難の業といわざるを得ません。
今回は、前任の事務・経理担当者の退職により、経審業務を引き継ぐことになった、吉川さん(仮名)からの経審の際の必要書類に関する相談事例です。
まさか!?自分ひとりで経審業務を行う日が来るだなんて、夢にも思っていなかったようです。
相談者 | 吉川さん(仮名)30代・女性 |
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所在地 | 東京都文京区 |
役職 | 事務・経理担当 |
【相談】
こんなことになるのなら、ちゃんと、前任者から引き継ぎをしておけばよかったです。前任の佐藤さん(仮名)は、定年のため今年の3月に退職しました。
うちの会社は、従業員が20名程度の会社で、私と佐藤さん、それから私の後輩の高橋さん(仮名)の3人で会社の事務や経理を担当していました。
佐藤さんの定年退職は、前々からわかっていたことでした。うっすらと「定年後も継続して会社で働いてくれるのではないかな?」と期待していたところもあったのですが、私が勝手に抱いていた淡い期待でした。
いなくなった後に、存在のありがたみがわかるといった典型的なパターンです。佐藤さんの退職後は、私と後輩の高橋さんとの2名体制で会社の経理・事務を回していくことになりました。高橋さんは、私の後輩ですが、私よりもしっかりしていて、仕事も早いし、ミスもほとんどないので、高橋さんと2人で仕事をやっていくことに何の不安もなかったのですけど...
ところが...
前任の佐藤さんが退職したタイミングで、「妊娠」を理由に、高橋さんが産休に入ることになりました。しばらくは週3~4日の時短勤務をしてくれるみたいですが、あまり体に負担のかかることを頼むわけにもいかないので、産休に入ってしまう予定です。
社長からは、経理や事務のことはもちろん、前任の佐藤さんが担当していた「経営事項審査業務」も行うように指示を受けています。
私は佐藤さんのサポートとして、何度か「経審」を行ったことはありますが、それはあくまでも佐藤さんの下で、指示を受けて、社内の書類を準備する程度だったため、手引きを見たこともなければ、全体の流れを把握しているわけでもありません。
ましてや、実際に都庁に申請をしに行ったこともありません。
佐藤さんの退職が決まったときに、きちんと業務の引継ぎを受けておけばよかったのですが、その時は、後輩の高橋さんもいるし、2人で力を合わせれば、何とかなると思っていたのですけど、まさか、高橋さんが産休に入るというのは全くの予想外の出来事でして...
うちの会社は、東京都の入札に毎年参加していて、売上の1割程度は、東京都の公共工事なので、経審で何かミスをしたり、失敗をしたりして、公共工事を受注できなくなったりしては、困ります。
社長は、現場が忙しく、社内の書類管理とかは一切していませんし、今までも、社内で経審業務を行えるのは、前任の佐藤さんだけだったので、いきなり私に業務を振られても、正直困ってしまいます。
ネットを検索していたら、経審は行政書士が申請できるということを知りました。その中でも、横内先生の事務所のホームページがわかりやすかったので、相談してみました。
具体的には、経審の際にはどんな書類を準備して都庁にもっていけば良いのかがわからないのですが、何とかならないでしょうか?
【ご回答】
前任の佐藤さん(仮名)の定年退職に加え、後輩の高橋さん(仮名)の産休もあって、経審の準備を行うのも大変そうですね。
相談者の吉川さん(仮名)に、何回も経審の経験があるのであれば、話は別ですが、今回、初めて経審を行うのに、周りに相談できる人が誰もいないというのは、かなり危機的な状況です。
しかも、吉川さんの会社は、売上の1割が東京都の公共工事を占めているとのこと。経審の不備で、公共工事の落札に影響が出るようだと吉川さんの責任問題にも発展しかねない重大な局面ですね。
このような場合には、ミスや期限切れがあってからでは遅いので、まずは、弊所のような外部の専門家に依頼することができないか?社長に話してみてください。
社長は、社内で処理するように言うかもしれませんが、自分でできるか否かは吉川さんがよくわかっているはずです。自分ができそうにないことを、正直に社長に相談することは、決して恥ずかしいことではありません。
ましてや、今まで、佐藤さん・吉川さん・高橋さんの3人態勢で行ってきたものを、今回から吉川さん1人でやらなければならなくなります。会社の経理や事務の仕事というのは、なにも「経審業務」だけではないはずです。
まずは、専門家に外注するという方法も選択肢のうちの1つであることを理解してください。
【解決策】
「具体的に、経審の際にはどんな書類を準備して都庁にもっていけば良いのかがわからない」とのことですが、以下のように考えてみてはいかがでしょうか?
これは、あくまでも私の考え方ですが「必ず必要な書類」と「必ずしも必要でない書類」の2つに分けたうえで、「必ずしも必要でない書類」についてはわかる範囲で準備するといったやり方です。
要は、経審の際に準備する書類に「優先順位をつけましょう」ということです。
たとえば、うちの事務所では、
といった書類については、経審を受ける際に必須の書類ですので、お客様にご用意してもらっています。稀に「建設業許可通知書をなくしてしまった」とか「前回の経営事項審査申請書の副本が見当たらない」といった方もいらっしゃいますが、毎年経審を受審して、東京都の公共工事も落札している吉川さんのような会社であれば、文書管理はしっかりしているはずです。
おそらく前任の佐藤さんが、大きめのファイルなどにまとめて保管しているはずですので、社内で探してみてください。
以上の書類は「これがないと経審を受けることができません」というタイプの書類ですので、「見つからない!」ということでは先に進めません。
一方で、
などは、無くても経審を受けることができます。もちろん、これらの書類は、経審の点数のうちW点(その他社会性)に関わってくる、大事な大事な書類ですので、あるに越したことはありません。
ただ、無くても経審を受けることができるのは事実です。そのため、書類の準備としては、「あとから」で良いです。まずは、経審を受けるために必須な書類の準備から進めると、よいかと思います。
吉川さんのように、
という方は、必要書類一覧に書いてある書類のうち、「必ず必要なもの」と「必ずしも必要でないもの」を区別したうえで、書類の準備に優先順位をつけるようにしてください。
とはいうものの、初めて経審を受ける会社であれば、上記のような方法で、とりあえず、経審の点数は低くなってしまっても良いので、必要最低限の書類を準備して経審に臨むということは、あり得ます。
しかし、吉川さんの会社のように、過去に何回も経審を受審して東京都の公共工事を落札している会社の場合、いくら事務の引継ぎがうまくいかなかったとは言え、「経審の点数が低くなってしまっても良いので、必要最低限の書類を準備して経審に臨む」というのは、危険です。
例えば、前出の「建退協の加入履行証明書」が提出できないとなるとW点は大きく下がります。その結果がP点にも影響してきます。「退職金規定」や「法定外労災の加入証明書」も同じです。
経審の結果によっては、
といった可能性を否定しきれません。
佐藤さんが残していった前回までの申請書類を参考に、ご自身で準備できるというのであればよいですが、そうではない場合には、経営事項審査を得意とした行政書士事務所に依頼してしまうのが一番の解決策であると思います。
この状況を吉川さんひとりで抱え込むことなく、社長に上記のようなリスクがあることを説明のうえ、会社としてどうすべきか?の判断・指示を仰ぐことを強くお勧めいたします。
【この記事の監修・執筆責任者】 東京都行政書士会:文京支部所属(行政書士登録番号:14081073) 行政書士法人スマートサイド:代表:横内賢郎/出版実績一覧はこちら 「技術職員100名以上」「年間売上100億円超」「全国展開している大臣許可業者」など大規模事業者の申請手続きも、得意としている事務所です。 |
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