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専任技術者の要件を理解して不安を解消!建設業許可取れる?取れない?資格・学歴・実務経験を一挙解説

建設業許可を取得するにあたって「経営業務管理責任者の要件」の次に重要なのが「専任技術者の要件」です。専任技術者の要件を理解するのは非常に難しいのですが、その理由は「資格」「卒業経歴」「実務経験」といった3つのパターンの組み合わせを考慮しなければならない点にあります。

資格者がいれば「建設業許可取得が有利になる」という点は間違いありません。しかし、資格者がいないからといって建設業許可を取得できないわけではありません。特殊な学科(以下「指定学科」)の卒業経歴、過去の工事の実務経験などの組み合わせによっては、当初の予定よりもスムーズに建設業許可取得に至るケースもあります。

このページでは、そんな「専任技術者の要件」について解説していきたいと思います。

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1.専任技術者とは?

「専任技術者」とは、建設工事に関する請負契約の締結・履行を確保するために、営業所ごとに配置が必要な建設工事についての専門的知識を有する人のことを言います。と言われても、実際には、どのような人が該当するのか?いまいちイメージがつきにくいですね。

そこで、まずは、どういった人が専任技術者としての要件を満たすのか?具体的に見ていきたいと思います。

1-1.資格者

建築士や施工管理技士といった資格を持っている人は、専任技術者になることができます。

該当する資格があれば

下記PDF(資料1)は、東京都の手引きを引用した「国家資格の一覧」です。見て頂ければわかる通り「その資格を持っていると専任技術者の要件を満たす」という資格は、たくさんあります。むしろ、たくさんの資格がありすぎて、1つ1つ見ていくのも苦労するくらいです。

しかし「どの資格を持っていれば、どの種類の建設業許可を取得できるか?」というのは、各自治体が発行している手引きなどを参考に確認していく他ありません。

2級建築士の場合

たとえば、2級建築士であれば、29ある建設業許可の種類のうち「建築工事」「大工工事」「屋根工事」「タイル工事」「内装工事」の5つの業種で専任技術者になることができます。

1級土木施工管理技士の場合

1級土木施工管理技士であれば、29ある建設業許可の種類のうち「土木工事」「とび・土工・コンクリート工事」「石工事」「鋼構造物工事」「舗装工事」「しゅんせつ工事」「塗装工事」「水道施設工事」「解体工事」の9つの業種の専任技術者になることができます。

〇は一般、◎は特定

なお、〇の場合は一般建設業許可の専任技術者になることのみが認められ、◎の場合は一般建設業許可のみならず特定建設業許可の専任技術者になることも認められます。

このように、1つの資格を持っていると同時に複数の業種の専任技術者になることができるという意味において、やはり資格者がいる(資格を持っている)と建設業許可取得に有利であるということができます。

1-2.特殊な学科の卒業経歴

資格の有無に続いて、必ず確認しておきたいのが「指定学科」の卒業経歴の有無です。この指定学科の卒業経歴については、見落としている人が非常に多いので、ぜひ確認してみてください(資料2:東京都の手引きを引用しています)。

資格を持っていない人は?

資格を持っていない人は実務経験を証明しなければ、専任技術者になることができないのが原則です。資格を持っていない場合、通常であれば10年の実務経験が必要です。

一方で、資格を持っていなくても指定学科の卒業経歴があると、10年の実務経験の証明期間が3~5年に短縮されます。10年の実務経験の証明期間が3年に短縮されるのか?5年に短縮されるのか?は、以下の表の通り卒業した学校の種類によって異なります。

卒業した学校の種類実務経験の証明年数
中学または高校の指定学科卒業後5年
大学または短大の指定学科卒業後3年
専門学校の指定学科卒業後5年(専門士の場合は3年)
指定学科の数は130以上

指定学科は、公表されているだけでも実に130以上あります。また、どの指定学科を卒業していると、どの業種の専任技術者の要件を満たすかもパターン分けされていますので、ぜひ、都庁や県庁のホームページで公表されている手引きを確認してみてください。

1-3.10年の実務経験のある人

「1-1.資格」や「1-2.指定学科の卒業経歴」がないからといって、専任技術者になることができないか?というとそうでもありません。

資格がなくても、指定学科の卒業経歴がなくても

「1-1」や「1-2」に該当しなくても10年の実務経験を証明することによって、専任技術者の要件をクリアし、建設業許可を取得することは可能です。逆にいうと「1-1」や「1-2」に該当しない場合には、10年の実務経験を証明しなければ、専任技術者になることができません。

甲野太郎さんのケース

たとえば、建築施工管理技士や土木施工管理技士の資格を一切持っていない甲野太郎さんがいたとします。その甲野太郎さんが、土木科、建築科、電気科、環境科といった指定学科の卒業経歴がある場合、実務経験の証明期間は3~5年で足ります。

しかし、普通科の卒業の場合。甲野太郎さんは10年の実務経験を証明しなければ、専任技術者になることができません。

甲野太郎さんが専任技術者になるケース

甲野さんが普通科卒業の場合

10年間の実務経験が必要
甲野さんが指定学科卒業の場合3~5年の実務経験で足りる
専任技術者要件の証明の難易度

証明の難易度としては、

  • 資格保有者
  • 指定学科の卒業経歴+3~5年の実務経験
  • 10年の実務経験

といった順番になりますが、地道にコツコツと工事の実績を証明するという点においては、10年の実務経験を証明していく方法が、1番手堅く、スタンダードな証明方法であるということもできるかと思います。

(1)資格者、(2)指定学科の卒業経歴、(3)10年の実務経験のある人の違いをご理解いただけましたでしょうか?(1)(2)(3)がなんとなく理解できたところで、以下では、その中身について、より具体的に見ていきたいと思います。

2.資格は強いが、万能ではない

「専任技術者」になるには、資格を持っていると、とても便利です。資格を持っていれば、合格証・免許証を提示するだけで、専任技術者の要件を証明できてしまうからです。

資格を持っておらず「工事請負契約書」「工事注文書・請書」「請求書・入金通帳」などで、工事の実績(=実務の経験)を証明しなければ専任技術者として認められない場合と違って、かなりスムーズに申請の準備を行うことができます。

2-1.1人のひとの採用で一気に17業種

1級建築施工管理技士の資格を持っていると

これは、私の事務所で実際にあった話ですが、1級建築施工管理技士の資格を持っている人を採用し「建築工事」「大工工事」「左官工事」「とび工事」「石工事」「屋根工事」「タイル工事」「鋼構造物工事」「鉄筋工事」「板金工事」「ガラス工事」「塗装工事」「防水工事」「内装工事」「熱絶縁工事」「建具工事」「解体工事」という17の業種の建設業許可を1度に取得した会社があります。

1級建築施工管理技士の資格者が経管の要件も満たしていると?

もちろん、別途、経管の要件の証明も必要になります。しかし、採用した1級建築施工管理技士の人が、過去に建設会社の取締役を長いこと経験しており、経管の要件も兼ねそろえている人でした。ということは、この人ひとりを採用し、常勤取締役に就任させることによって、建設業許可の重要要件である「経営業務管理責任者」と「専任技術者」の要件を両方とも満たしてしまうことになります。

しかも、一気に17業種もの建設業許可を取得できてるのですから、すごい話です。

資格がなければ、資格を取得するか?資格者を採用するか?

社内に資格者がいない会社の場合、とび・土工・コンクリート工事の許可を取得したいのであれば、自ら、建設機械施工技士や土木施工管理技士の資格の取得に挑戦したり、または、建築工事の許可を取得したいのであれば、建築施工管理技士や建築士の資格を持っているひとを探してみたりするとよいのかもしれません。

2-2.資格を持っているのに実務経験の証明が必要なケース

「2-1」では、資格があると建設業許可取得に有利であるということを書きましたが、実は、資格は、万能ではありません。一般的には資格を持っていると、「実務経験を証明する」という面倒な作業をショートカットして建設業許可を取得することができます。

原則/例外「資格者」が専任技術者になる場合の原則と例外

原則

実務経験の証明は不要
例外資格によっては、実務経験の証明が必要なケースも
資格があるのに実務経験の証明が必要?

しかし、中には、資格があるにも関わらず、実務経験の証明をしなければ専任技術者としての要件が認められないものもあるのです。

その代表格が、電気工事の建設業許可を取得するための「第2種電気工事士」「電気主任技術者」および、電気通信工事の建設業許可を取得するための「電気通信主任技術者」です。

第2種電気工事士の場合

たとえば「第2種電気工事士」の場合。免許交付後3年以上の実務経験が必要です。そのため「第2種電気工事士」の資格を使って、電気工事の建設業許可を取得する際には、第2種電気工事士の免許証のほかに、免許交付後3年以上の実務経験を「工事請負契約書」や「注文書・請書」や「請求書・入金記録」で証明しなければなりません。

電気工事の建設業許可を取得したいと考えている会社の中には、多くの電気工事士が在籍しているケースが見受けられます。ただし、第2種電気工事士の資格を使って、建設業許可を取得する際には、免許交付後3年以上の実務経験の証明が必要なことを覚えておいてください。

第1種電気工事士の場合

なお、同じ電気工事士でも第1種電気工事士の場合には、実務経験を証明することなく電気工事の専任技術者になることが可能です。

このように、一見すると、資格があれば、何でも解決できてしまうようにも見えますが、細かく見ていくと、実務経験の証明が必要な資格もあります。

どの資格でどの建設業許可を取れるか?

どの資格でどの建設業許可を取得できるかについては、細かく場合分けされているので、建設業許可取得に役立ちそうな資格があれば、常に都や県の手引きなどで確認する癖をつけておくとよいでしょう。

3.意外と使える!特殊な学科の卒業経歴

資格者の次に「専任技術者」になりやすいのは、指定学科を卒業した経歴のある人です。建設業許可を取得したいという社長は、社員の高校や大学の卒業経歴を今一度、確認してみてください。「高校で環境について学んでいた」「機械工学系の専門学校を卒業している」「大学は建築学科だった」という人が、社内にもいるかもしれません。

3-1.こんなにある。「指定学科+実務経験」の証明事例

資格だけでなく、卒業経歴も大事なわけ

弊所に建設業許可取得のご相談に見えたお客さまには「資格者がいないか?」を必ず確認するとともに「指定学科の卒業経歴のある人がいないか?」についても必ず確認するようにしています。

以下は、いずれも資格者はいなかったものの「指定学科の卒業経歴+実務経験」を証明して専任技術者の要件を証明することができた成功事例です。 


<内装工事>

専門学校の建築科(高度専門士)の卒業経歴+3年の実務経験の証明 

<管工事>

大学の機械工学科の卒業経歴+3年の実務経験の証明 

<電気通信工事>

高校の電気科の卒業経歴+5年の実務経験の証明 

<タイル工事>

高校の農業土木科の卒業経歴+5年の実務経験の証明


建築科、電気科、機械工学科、農業土木科など、さまざまな学科の卒業経歴によって、10年の実務経験が、3~5年に短縮されています。

中学、高校、大学だけでなく専門学校も含まれる

なお、指定学科の卒業経歴は、中学、高校、大学の他、専門学校の卒業経歴も含まれます。また、中学、高校、専門学校の指定学科の卒業経歴があれば、必要な実務経験の証明期間は5年(専門士、高度専門士の場合には3年)、大学の指定学科の卒業経歴があれば、必要な証明期間は3年というように区分けされています。

卒業した学校の種類実務経験の証明年数
中学または高校の指定学科卒業後5年
大学または短大の指定学科卒業後3年
専門学校の指定学科卒業後5年(専門士の場合は3年)

3-2.一覧にない学科での建設業許可取得事例

上記の「建築科」「機械工学科」「電気科」「農業土木科」などは、いずれも、都や県の手引きの一覧に掲載されている学科です。

一覧に掲載されていない学科の場合

それでは、一覧に掲載されていない学科の場合「指定学科」とは認められないのでしょうか?結論から言うと、一覧に掲載されていない学科であったとしても「指定学科」として、実務経験の証明期間が3~5年に短縮されることはあります。

一覧に掲載されていない学科の具体例

たとえば、弊所では、実際に以下のような「一覧に掲載されていない学科」の卒業経歴を使って、専任技術者の要件を証明し、建設業許可を取得した事案があります。


  • 「テレビ電気科」の卒業経歴を使って、機械器具設置工事の専任技術者になることができたケース
  • 「建築室内設計科(高度専門士)」の卒業経歴を使って、とび・土工・コンクリート工事の専任技術者になることができたケース
  • 「機関学科」の卒業経歴を使って電気通信工事の専任技術者になることができたケース​

「テレビ電気科」だと電気工事?というイメージですが、意外にも機械器具設置工事の指定学科として認めてもらうことができました。

「建築室内設計科」だと内装工事や建築工事のイメージですが、これもいい意味で予想を裏切り、お客さまのご希望通りの、とび・土工・コンクリート工事の指定学科であると認められました。

「機関学科」についても、文字だけをみると機械器具設置工事や管工事をイメージしそうですが、電気通信工事の指定学科であると認められました。

卒業証明書のほかに、履修証明書や成績証明書が必要

上記のケースは、いずれも、「1-2(資料2:指定学科の一覧表)」の一覧に学科名が掲載されていません。そのため、卒業証明書とともに履修証明書や成績証明書を持参して事前に都庁に照会を掛けたました。その結果、指定学科と認めてもらえたという事例です。

但し、あくまでも個別具体的に検討した結果、認めてもらえたにすぎません。そのため、一般的に「テレビ電気科」だから必ず「機械器具設置工事」の指定学科に該当するというわけではありません。

指定学科に該当するだけで、実務経験の証明期間が短縮

いずれも、通常であれば10年の実務経験の証明が必要なところ、指定学科に該当すると認められたおかげで、実務経験の証明期間が、3~5年に短縮されたという事例です。これにより、許可取得の可能性が大いに広がったことは確かです。しかも、卒業証明書や履修証明書や成績証明書を持参して事前に照会を掛け判断を仰ぐだけですから、手間もそれほどかかりません。

指定学科に該当するか?は、許可行政庁に照会を!

このように、一覧に該当がなくても、指定学科として認められたケースがありますので、これから建設業許可を取得する際には、一覧の確認だけであきらめることなく、都庁や県庁に「指定学科に該当しないか」という照会も検討してみてください。

4.地道に証明、10年の実務経験

「資格」もなければ「指定学科」の卒業経歴もない場合、専任技術者の要件の証明をあきらめなければならないか?というとそういうわけではありません。すでに記載しましたが「資格」がなく「指定学科の卒業経歴」もない場合には、10年間の実務経験(工事の実績)を証明することによって、専任技術者になることができるのです。

4-1.実務経験の証明の仕方

過去の工事実績・実務の経験を証明するといっても、どうやって証明すればよいのでしょうか?実務経験の確認資料・証明資料として役に立つのが「工事請負契約書」「注文書・請書」「請求書・入金通帳」の3点です。

実務経験証明の3点セット

「工事請負契約書」や「注文書・請書」については、説明するまでもありませんね。過去の工事の実績を証明する場合には「工事請負契約書」や「注文書・請書」が有力な証明資料となります。

「請求書+入金記録(入金通帳)」が一般的

一方で、小規模の工事や金額の小さい工事の場合「工事請負契約書」や「注文書・請書」をいちいち取り交わしていないという場合もあるでしょう。その場合に役に立つのが「請求書・入金通帳」です。内装工事の実務経験を証明したいのであれば内装工事を請負った際に、発注者(相手先)に交付した請求書の控え、および、その相手先から請求金額の入金があったことが分かる銀行の入金通帳が、証明資料になります。

入金通帳を紛失した場合は?

さすがに「請求書の控えを保管していない」いう人は、いないと思うのですが、よくあるのが入金通帳の紛失です。過去に使っていた入金通帳を失くしてしまった場合には、取引先金融機関に過去10年分の出入金明細を発行してもらってください。入金通帳に代わる確認資料として使用することができます。

10年以上前の請求書+入金記録

「資格もない」「指定学科の卒業経歴もない」という人は、10年の実務経験を証明しなければならないわけですから、基本的には10年以上前の請求書の控えと入金記録を準備し、現在までの工事実績を1件1件証明していくことになります。

4-2.異業種間の振替

「資格なし」「指定学科の卒業経歴なし」の場合の、実務経験の証明期間は、10年ということを前提に記載してきましたが、実は、異なる業種間での実務経験の振替を行うことによって、8年間の実務経験で専任技術者の要件を証明できるケースもあります。

振替元振替先

土木一式

とび・土工、しゅんせつ、水道施設
建築一式大工、屋根、内装、ガラス、防水、熱絶縁
10年ではなく8年間の実務経験の証明

少し特殊なケースですので、具体例を挙げてみていきます。

たとえば、土木工事の経験は「とび工事、しゅんせつ工事、水道施設工事」の経験に振替が認められています。また、建築工事の経験は「大工工事、屋根工事、ガラス工事、防水工事、熱絶縁工事」の経験に振替が認められています。

振替元4年、振替先8年

この場合、振替元の土木工事の経験が4年、振替先の水道施設工事の経験が8年あれば、水道施設工事の経験が10年なくても、水道施設工事の専任技術者の要件をみたすことになります。

同様に、振替元の建築工事の経験が4年、振替先の屋根工事の経験が8年あれば、仮に、屋根工事の経験期間が10年に満たなかったとしても、屋根工事の専任技術者の要件をみたすことになります。

結果的には12年間の証明が必要

ただし、振替を行うことができる業種が限られていること、結果的には12年の実務経験の証明が必要になることから、この異業種間の振替制度を利用して、専任技術者の要件を証明するケースはあまり多くないようです。

4-3.自治体による証明方法の違い

実務経験の証明で最も問題になるのが、自治体によって要求される確認資料の件数が異なるという点です。

いままでの説明で、

  • 10年の実務経験の証明が必要である
  • 実務経験の証明は「工事請負契約書」「注文書・請書」「請求書・入金通帳」でおこなう

という点は理解できたと思います。

全部で何件の工事の実績の証明が必要か?

それでは、10年間の実務経年を証明するには、全部で何件の工事の確認資料(請求書・入金通帳など)が必要になるでしょうか?この点について自治体ごとに違いがあるのです。


東京都の場合。

以前までは、実務経験の証明には、ひと月につき1件の工事に関する「工事請負契約書」などの確認資料が必要でした。10年の実務経験を証明するには、1年×12か月分×10年分=120件分以上の「工事請負契約書」「注文書・請書」「請求書と入金記録」のいずれかが必要だったわけです。

なお現在では、運用が変わり、3か月に1件という割合に緩和されました。緩和されたと言っても、10年の実務経験を証明するには、40件以上の「工事請負契約書」などの確認資料が必要になります。


これに対して、神奈川県の場合。

神奈川県の手引きを見てみると「各年1件以上」とあり、年1件以上の資料で足りるということになっています。つまり1年×10年分=10件の「工事請負契約書」などの確認資料の提示で、10年の実務経験の証明をすることができてしまうのです。


これは大変大きな違いですね。

同じ10年なのに「40件も必要」と「10年で足りる」

同じ10年の実務経験を証明するのに、東京都の場合は40件の確認資料が必要で、神奈川県の場合は10件の確認資料で足りる。

このように実務経験の証明方法には、自治体によって大きな違いがあることを覚えておいてください。ケースによっては、東京都ではなく、神奈川県で建設業許可を申請したほうが取得しやすいというケースもあるかもしれません。営業所をどこに置くか(東京都に置くか?神奈川県に置くか?)も関係しますが、状況に応じて判断することが必要になります。

5.実務経験証明の落とし穴

私の経験上「工事請負契約書」や「注文書・請書」よりも、「請求書・入金記録」で実務経験の証明を依頼されることの方が多いです。いちいち、契約書を交わしていないというケースもあるのでしょうが、10年前の契約書を遡って探し出すというよりも、請求書の控えと入金通帳(もしくは取引先金融機関発行の入金明細)を探し出す方が簡単で、早いといった点に理由があるように思います。

このような、実務経験の証明ですが、いくつか注意しなければならない落とし穴があります。

5-1.物販、保守、点検、メンテナンス

機械器具設置工事・管工事・電気工事を行っている会社の場合、設置工事とともに設置した機器の販売・保守・点検・メンテナンスを業務としていることがあります。

保守、点検などの請求書には要注意

建設業許可を取得する際に必要になる実務経験の証明とは、建設業許可を取得したい工事の実績(実務経験)の証明です。そのため、実務経験を証明するための契約書や注文書や請求書は、あくまでも許可を取得する工事に関するものでなければなりません。

工事実績の証明をする以上、工事に関する請求書を

機器の販売・保守・点検・メンテナンスに関する「契約書」「注文書・請書」「請求書・入金記録」で工事の実績を証明することはできず、工事の実績を証明する以上、工事に関する確認資料の提出が必要になります。

駆け出し時代の苦い経験

これは駆け出し時代の私(横内)の苦い経験です。管工事の東京都知事許可を取得する際、お客さまから依頼されて120件分の「請求書・入金通帳」を持参して、都庁に申請に行ったところ。

お客さまからお預かりした請求書の中に「メンテナンス」に係る請求書があるのが、審査の場で発覚しました。

審査担当者からの思わぬ指摘

審査担当者から「これは工事の件数にはカウントされません」と言われ、再度申請手続きをやり直す羽目になったという経験があります。

当時は、10年の実務経験を証明するには1か月につき1件、10年で120件分の請求書が必要であったため、お客さまから預かった請求書の中に、管工事以外の保守、点検、メンテナンスに関する請求書も含まれていることを確認せずに申請に行ってしまったのです。

不足分については、後日補充

後日、不足分については「管工事の請求書」と「入金通帳」をご提出いただき、改めて都庁に申請に行き、無事120件分の工事実績を証明するに至りました。

工事の実務経験を証明する以上、工事に関する請負契約書、工事に関する注文書・請書、工事に関する請求書・入金通帳でなければなりません。物販、保守、点検、メンテナンスに関する実績・資料をいくら提出しても、専任技術者の実務経験を証明する際の資料には該当しませんので、ご注意ください。

5-2.重複不可ルール

また、実務経験の証明は「1業種につき1期間」といったルールが定められています。言い換えると重複不可ルールです。

1業種につき1期間とは?

たとえば、平成21年1月から平成30年12月までの10年間120か月を、塗装工事の工事実績として使用したら、その間、どんなに防水工事を行っていたとしても、塗装工事の実績として使用した期間を、防水工事の実績として使用することができません。

つまり、塗装工事の建設業許可を取得した後の令和2年12月になって、防水工事の建設業許可が必要になったからといって平成23年1月から令和2年12月の10年間を防水工事の実務経験として使用することは許されません。

防水工事の実務経験期間として使用されることが許されるのは、塗装工事の実務経験として使用した期間を除いた、平成31年1月以降ということになります。

意外と知らない?注意が必要

これは意外と知らない人も多いので、注意が必要です。「塗装工事と防水工事の両方の建設業許可を取得する必要がある」といったように複数の建設業許可を取得しなければならない場合、20年の実務経験期間が必要になるのです。塗装工事と防水工事のどちらを優先して取得したいのか?そのためには、いつの10年をどの工事の実務経験の証明期間として使用するのか?をあらかじめ吟味する必要があります。

直近の10年の実務経験を何の業種を取得するのに使うべきか?

直近の10年の期間を○○工事の建設業許可を取得するために使用して、○○工事の建設業許可を取得した後になってから、□□工事の建設業許可も取得したいとなった場合。

直近の10年を○○工事の建設業許可を取得するための期間として使用した以上、その10年間は、○○工事の実務経験期間として確定するため、□□工事を取得するための実務経験期間として使用することはできません。

そのため、10年の実務経験を使用して□□工事の建設業許可を取るのは、さらに10年後ということになります。

20年の実務経験を証明して2業種を取得

なお、私のお客さまの中には、平成14年~平成23年までの10年間を建築工事の実績とし、平成24年~令和3年までの10年間を大工工事の実績として、建築工事と大工工事の専任技術者を兼任している人がいらっしゃいます。

また、平成11年~平成20年までの10年間を内装工事の実績とし、平成21年~平成30年までの実績をガラス工事の実績として、内装工事とガラス工事の専任技術者を兼任している人もいらっしゃいます。

このように実務経験の証明期間は1業種1期間としてカウントしなければならず、重複して使用するのは不可となっています。

5-3.電気・消防は、実務経験のみでは許可を取得できない

続いて、実務経験証明の落とし穴3つ目は、どんなに実務経験を証明しても、実務経験のみでは取得できない建設業許可があるという点です。

実務経験を何年証明しても、無意味?

「資格」や「指定学科の卒業経歴」がなければ「10年の実務経験」を証明することが必要になるという流れで、いままで説明してきましたが、実は、建設業許可の29業種の中には、10年の実務経験を証明したとしても(どんなに長い実務経験を証明したとしても)無資格者が専任技術者になることができない業種が2つ存在します。それが、電気工事と消防工事です。

電気工事に関しては電気工事施工管理技士、電気工事士、電気主任技術者などの資格が、消防工事に関しては消防設備士などの資格が、それぞれ必要になります。

電気工事と消防工事の特異性

電気工事と消防工事の建設業許可を取得したいとお考えの人は、この2業種については、実務経験の証明のみで建設業許可を取得することができず、必ず資格が必要になる旨、覚えておいてください。

5-4.未許可なのに、500万円以上の工事の実績がある?

実務経験を証明する際には「工事請負契約書」「注文書・請書」「請求書・通帳」などの確認資料を提示しなければならないことは、記載した通りです。

500万円を超えている工事の請求書

お客さまから建設業許可の代行申請のご依頼を受けて、確認資料として預かった契約書や入金記録を精査していると、工事の金額が500万円を超えている「契約書」「注文書・請書」「請求書・入金記録」を発見することがあります。何が問題だかわかりますか?

勘のいい人なら「何が問題か?」もう、お分かりですね。建設業許可を取得するのは500万円以上の工事を受注するためです。逆にいうと、建設業許可を取得していない会社は、500万円以上の工事を請負うことができません。

未許可期間に500万円以上の工事を施工していた?

建設業許可を取得するための実務経験を証明する資料の中に、500万円以上の工事の実績が含まれているということは、未許可期間(建設業許可を取得していない期間)の間に500万円以上の工事を請負っていたということですから、建設業法違反になります。

これはまずいです。今のところ、未許可期間の間に500万円以上の工事を施工していたことが発覚したからといって、許可を取得できなくなるという経験をしたことはありません。

しかし、そもそも、未許可の間に500万円以上の工事を請負ってはならないのが大前提です。建設業法に抵触しそうな場合には、直ちに許可を取得して法律違反を回避しなければなりません。

6.資格者採用の落とし穴

実務経験を証明しようとするときの注意点に続いて、専任技術者の要件を満たす「資格者」を採用して建設業許可を取得しようとするときの注意点について、説明させて頂きます。

「資格者を採用するから建設業許可取得は確実」と思っていると、思わぬ落とし穴があるのも事実です。過去の経験も踏まえて解説させていただきます。

6-1.専任技術者は、申請会社に常勤していることが必要

まず、経営業務管理責任者と同様に、専任技術者は申請会社に常勤していることが必要です。

名義貸しは法律違反

申請会社に常勤していないにもかかわらず、あたかも常勤しているかの如く装って、建設業許可を取得しようとすることを名義貸しといいます。もちろん、名義貸しは立派な法律違反です。

常勤性の証明資料

専任技術者の常勤性を証明する資料ですが、経管の時と同様に、健康保険証の事業所名の記載で判断します。健康保険証に事業所名の記載がない場合は「健康保険被保険者資格取得確認および標準報酬決定通知書」や「住民税特別徴収税額納税通知書(徴収義務者用)」で判断することになります。

よくあるのが、健康保険証に事業所名の記載がないために「健康保険被保険者資格取得確認および標準報酬決定通知書」を常勤資料として準備した場合。

専技への給料が数万円って?

もし仮に、新たに専任技術者として招き入れた人の標準報酬額が数万円だったらどうでしょう?専任技術者は申請会社に常勤していなければならない存在です。おおむね平日917時、週5日勤務しているのにも関わらず標準報酬が数万円だと、1時間あたりの時給が最低賃金を下回ってしまうのではないでしょうか?

これでは名義貸しを疑われても仕方ありませんね。常勤性を証明するために標準報酬決定通知書を提出したにも関わらず、標準報酬決定通知書の月額報酬数万円という記載から非常勤であることがバレてしまうという、何とも皮肉な結果になってしまいます。

6-2.重複チェックで引っかかる!

また、上記以外に、重複チェックで名義貸しが疑われるケースがあります(東京都庁へ建設業許可を申請する際には、データベースへの登録をもとに、申請会社の経管・専技が、他の会社の経管・専技として登録されていないかのチェックを受けます。ここでは便宜上「重複チェック」と記載します)。

申請会社以外の会社での登録

前述のごとく、専任技術者は、建設業許可会社に常勤していることが求められていますから、他の会社に常勤していることはもちろんのこと、他の会社の経管、専技であるということもあり得ないわけです。

X社のCさんが、Y社で専技登録していたケース

たとえば、CさんをX社の専任技術者として、建設業許可を取得しようとする場合。Cさんが「X社の専技であり、かつY社の専技でもある」ということは、あり得ません。1人の人間であるCさんが、X社にもY社にも常勤しているということがあり得ないからです。そのため、審査の際には、申請会社以外の会社で専技(もしくは経管)として登録されていないか、重複チェックが行われます。

実は私も、重複チェックに引っかかった経験があります。

審査の場で、重複登録が発覚!

上記の例でいうと、X社からの依頼を受けてCさんを専技として建設業許可を取得するべく、都庁に申請をしに行ったところ、審査の際の重複チェックで、CさんがY社の専技として登録済みであるということが発覚したのです。

この場合、Y社がCさんを「Y社の専任技術者から削除する手続き(変更届の提出)」をしない限り、X社の申請は受け付けてもらうことができません。私が経験したケースでは、Y社側の変更届の提出し忘れということで、Y社が急いで、CさんをY社の専任技術者から削除することで、解決しました。

Y社がCさんの登録削除を拒んだら?

しかし、Y社側が変更届の提出を拒んだらどうでしょう?Y社としては、Cさんの後任がいないにもかかわらず、Cさんを専任技術者から削除するということは、建設業許可を取り下げることを意味します。

せめて、Cさんの後任が見つかるまで、もう少し待って欲しいという気持ちがわいてこないとも限りません。Cさんの後任がすぐ見つかればよいですが、なかなか見つからなければ、Y社の変更届の提出が遅れると同時に、X社の許可取得もそれだけ遅れてしまいます。

少しでも早く建設業許可を取得したいX社にとっては、たまったものではありません。

前の会社での登録状況についても要チェックを

このように、資格者を採用して専任技術者の要件を満たそうとする場合には「給料をきちんと払っているか(常勤性に疑いがないか)?」「前の会社での登録が残っていないか?」について、しっかりと確認する必要があります。

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